アイコン チェジュ機事故6つの問題点 事故経過 務安空港と福岡空港ガルーダ機との違い


チェジュ機の事故はいくつもの悪条件が複雑に重なり大惨事になったようだ。
時間経過詳細、チェジュ航空の事故機、12月29日。
08時30分、バンコク発のチェジュ機の務安国際空港到着予定時間(遅れていた)
08時54分ころ、管制塔、チェジュ機に対して北向き(南から北)で着陸許可。
08時57分ころ、管制塔、同機に対してバードストライクに注意するよう勧告。
08時58分ころ、チェジュ機、ADS-Bでの最終確認位置は空港南約1マイル(約1.6キロ)地点で確認。
08時59分ころ、チェジュ機、「メーデー(緊急事態発生)」と管制塔へ無線連絡し、着陸やり直す。
(ゴーアラウンド=着陸態勢から再浮上の間の時間が短すぎる)
09時00分ころ、1回目と異なり当初の反対方向(北から南)から滑走路へ進入開始、当初の進行方向から逆進行で再着陸態勢)
09時01分ころ、管制塔、同機に対して南向きでの着陸許可
09時03分ころ、胴体着陸(滑走路全長2800メートル、滑走路の900メートル地点に着地)
09時03~04分ころ、胴体着陸後、時速200キロのスピードで減速なく、滑走路上で停止できず、滑走路の延長線上にあるローカライザーの構築物に激突して外壁にいたり今回の大惨事となった。
09時04分ころ、管制塔、チェジュ機激突後、消防に対して出動要請(メーデーから5分後)
09時05分ころ、消防出動

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1、車輪が前後とも降りず。
バードストライクでエンジンがストップしたとしても車輪(ランディングギア)が降りないことはほとんど考えられない(稀に複合的に連鎖して車輪が降りないことは考えられる)という。
韓国国土交通部も「通常エンジン故障と着陸装置の故障が連動することはない」としている。

2、車輪は手動ですぐ降りる
航空機は通常高度2400~2500フィート(0.305m/750メートル前後)
)で車輪を下ろす。着陸装置が作動なくても手動でレバーを引けばロックは解除され、27センチあまりのヒモを引っ張れば車輪は降りる。その間17秒あまり。
高度1000フィートあまりになっても車輪が降りていなければ警告音がけたたましく鳴るという。車輪降下を手動操作で行う方法を知らない現役パイロットは皆無とされる。
手動でも対応できない事態に陥っていた可能性もある。

3、海上ではなくなぜ硬い滑走路に胴体着陸を試みたのか
すぐ近くは干潟が広がり先は海、胴体着陸は機体を最大限水平に維持したまま速度を落とし、固い滑走路に接地しなければならないなど高難度の操縦技術が必要。2009年のハドソン川の奇跡のように不時着水の選択はなかったのか。
専門家によると、海上着水は強い衝撃を受け、よほどの技術を持つパイロットでなければ危険だという。
滑走路脇の芝生への着陸も、芝生の中にはいろいろな構築物があり、やはり危険だという。
ただ、当機のパイロットは減速できなかったものの胴体着陸している。

4、滑走路に捲く減速剤、消防隊の待機
 胴体着陸でも、管制塔と意思疎通ができていれば、空港消防を準備させ、事前に着陸機を減速させるため、滑走路の摩擦係数を高め、炎を冷やすための泡状物質の消火剤を撒くが、今回は時間もなく、そうしたことは行われなかった。
通常ならば、胴体着陸による火災・爆発を避けるため、上空を旋回して燃料をぎりぎりまで減らし、胴体着陸に入る。
管制塔が空港の消防隊に連絡したのは激突後だったことが判明している。
以上のすべてのことが行えないほど、事故機は危機的状況にあり、緊急胴体着陸を試みたのかもしれない。

5、着陸後、どうして減速できなかったのか
飛行機のブレーキは、①着陸装置、②スピードブレーキ、③エンジンの逆噴射。
①着陸装置(ランディング・ギア)=前後の車輪は着陸ショックの軽減装置でブレーキの役割を担う。しかし、今回は車輪が降りなかった。

②スピードブレーキは、翼のフラップを立て、空気抵抗により減速させる。通常の場合、車輪を降り、着地すると同時に自動でスピードブレーキも作動する。車輪が降りていないため、手動となるが手動でフラップを制御したかは不明。ただ、胴体着陸時、同機のフラップは立っていない。

③逆噴射では、逆噴射と連動してエンジンカバーが開き、空気抵抗を最大化させるが、今回はエンジンの故障で逆噴射できなかった可能性が高く、エンジンカバーも通常のままだった。

6、ローカライザー(電波誘導装置)の設置場所と設置方法が問題となっている。
現場となった務安空港の場合、ローカライザーの設置は滑走路から259メートル地点だった。★(国際民間航空機関(ICAO)は、滑走路端から300メートル以内の安全区域にローカライザーを設置してはならない)
★(韓国国土交通部例規航空障害物管理指針第25条は、・・・ローカライザーなど支援施設は破壊されやすい装着台に装着しなければならない)

しかし、務安空港は滑走路端から260m付近にローカライザーが設置されていた。昨年の改修工事で盛土してコンクリートを土台にし、高さ(2mの基礎+2mの機器の)計4m×奥行き4m×幅40mが構築されていた。
韓国ではほかの空港もローカライザーの下部をコンクリで固めた空港が何箇所もあり、危険との認識がまったくないようだ。
当然、改修工事を行った業者は、コンクリ製で屈強にしたことにより、空港側から多くの予算をもらい、問題のローカライザーを設置したことになる。
(昨年、務安空港では、ローカライザーの土台が屈強なコンクリで固められたとしているが、韓国国土部は今回、問題ないとしている。しかし、国土部はこうした違法状態のローカライザーの設置を放置、昨年のローカライザー改修工事に際しても、国土部航空局が完了検査も行ったと見られるものの、国土部は責任が及ぶことを回避するため「問題ない」と発言したと見られる)
(2014年のセウォル号沈没事故や2022年の梨泰院のハロウィンの悲劇に見られるように、韓国では被害家族の団体には左派の市民団体が支援して、政治問題化させ、より広範囲でより多くの関係者が常に逮捕されるお国の事情がある)

胴体着陸のチェジュ機は、滑走路900メートル付近で着地、時速200キロで走行し残り1800mの滑走路では止まれず、その先の291メートルにある高さ4メートル×幅員約40メートルのローカライザーに激突、安全区域を通り過ぎ、フェンスを突き破り、そして土嚢の外壁に衝突して炎上した(ローカライザーに激突したときに火災も発生していたと見られている)。
なお、欧州では危険性を考慮し折り畳み式のローカライザーになっているという。

7.務安国際空港を取り囲む形で野鳥の棲息地4ヶ所。
当地一帯は、島や干潟・入り江が多く、渡り鳥の飛来地や中継地として知られている。野鳥の群れを空砲や電波で追い払うなどまったく行われていない。特にこの時期は空港周辺を飛ぶ渡り鳥が多く、中には大型のツルなども飛んでいる。

当事故につき、ボーイングの株価は米市場ではほとんど反応しなかった。12月27日180ドル、29日事故、30日176ドル、31日177ドル。ただ、1月2日になると171円まで下げ、3日は169.90ドルとなっている。チェジュ機の事故について、投資家も次第にシステムの複合的な問題だと認識し始めたようだ。

韓国国土交通部高官は、
フライトレコーダー(=ブラックボックス)は一部損傷しており、回復も含めて米国で解析する。
コックピット内のボイスレコーダーは韓国当局が対応、音声ファイルへのデータ変換作業は2日に完了している。ただ、この音声ファイルは事故機の最後の数分間の重要な情報を提供する可能性があり、捜査を進める上で極めて重要となるため、一般に公開するのは難しいかもしれないと述べた。
また、事故機が激突したコンクリート製の構造物を務安国際空港に設置した空港改修の経緯については、現時点で詳細な情報を提供できないと語っている。

・・・何でも明らかにしていくとした政府高官の発言から大幅にトーンダウンしている。捜査上支障が出るからとしているが、日本政府の十八番(おはこ)の受け売りだろうか。
 警察はチェジュ航空の本社と務安国際空港を捜査している。

参考資料:韓国の聨合ニュース、KBS、朝鮮日報、東亜日報、日本各紙などのほかロイター通信、ウィキペディアなどの記事により作成。


スクロール→

渡り鳥の高度  単位:メートル

干潟などの生息地・中継地・飛来地などでは集団低空飛行

最高高度

鳥名

500

シロクロアメリカムシクイ、モリムシクイ

800

ダイゼン

1,000

ズアオアトリ

1,500

ハクガン

2,000

ヨーロッパアマツバメ

2,700

アメリカコハクチョウ(北米大陸)

3,300

ノハラツグミ

3,900

タゲリ

4,800

コウノトリ

6,000

オオソリハシシギ

6,400

マガモ

8,000

キバシガラス

インドガン(ヒマラヤ山脈越え)

アネハヅル(ヒマラヤ山脈越え)

8,200

オオハクチョウ(アイスランドから西ヨーロッパ)

11,000

マダラハゲワシ(コートジボアール上空)

 

<韓国一の野鳥棲息地>
務安国際空港を取り囲む形で野鳥の棲息地があり、近くにはラムサール条約地(2008年1月)の干潟もある。務安干潟や一帯は渡り鳥の中継地としても知られ、韓国一多い野鳥が棲息している。しかも、務安国際空港の周辺4ヶ所にも野鳥の棲息地があるものの、空港には鳥をキャッチするレーダーもなく、鳥の対策室もなく、ほかの韓国内の国際空港より鳥対策の要員も少なく、数人しかいない有様。
元々同空港の建設・開港について、バードストライクが問題視されたが、政治的に決定したもの。新しい空港としては滑走路の距離2800m×幅員45メートルも短い(仁川は3750メートル/金浦3600メートル、金海・済州は3200メートル・・・いずれも国際空港)。
務安国際空港では現在、3126メートルにすべく326メートルの延長工事を行っており、現在使用できる滑走路は2500メートルだとされる。

建設前の利用者計画数は年間992万人、2023年の利用客数は24万6千人(2019年は89万人)。そのため、同空港での予算は限られ、関係職員も少なく、国の助成・補助金に依存した空港運営となっている。結果、鳥対策室もなく、鳥対策策設備も限られ、鳥対策レーダーもない。

空港の運営は韓国空港公社務安支社が、管制・監督などの業務は釜山地方航空庁務安空港出張所が担当している。

全羅南道には地方空港の光州空港・木浦空港が以前からあり、特に光州空港(2830メートルの滑走路2本/旅客数203万人/2019年)は元々国際空港であったが、務安国際空港が2007年に開港し光州空港の国際便機能は務安国際空港に集約された。木浦空港は滑走路が1600メートルと短く務安空港開港で民営便は廃止され、現在は軍用飛行場となっている。

当新空港は中道左派の金大中政権時代の1997年に最終決定、左派の盧武鉉政権時代の2007年に開港した。

事故機は1回目滑走路南から進入していた(地図は上が北)。2回目は北から進入・着地していた。

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↓<コンクリ構造物=ローカライザーに激突>

務安空港のローカライザーは、基礎部分は高さ2メートルのコンクリ構造物に、鉄柱製の高さ2メートルのローカライザー機器が一体化して計4メートルの高さで東西に30メートル、オーバーラン機を通せんぼしている。
海外では信じられない務安空港の構造物のローカライザーだと評されている。
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↓務安国際空港、空港の南側
外壁=土塁=盛土にコンクリ構造物を設置し、その構造物にローカライザーを設置している。

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参考:福岡空港、ガルーダ航空機炎上事故
市街地にある福岡空港は、夏は北から南へ進入、滑走路(2800m)→安全区域・フェンス(4~500メートル)→東西に片側1車線の空港周回道路→約700メートルの空地・農地・緑地帯(公園など)となっている。
冬季は滑走路の南から北へ向け飛行、滑走路+安全区域+フェンス(4~500メートル)、空港敷地外の北側に幹線道路があり、その道路北側は空港所有の空地が南北に500メートルあまり設けられている(風向きで夏と冬とでは飛行の発着方向が逆になる)。滑走路端からフェンスまでの安全区域は長く、フェンス越に道路があるものの、さらに空き地が十分確保されている。福岡空港のローカライザーは滑走路南端の滑走路近くの東側の芝面に設置してあり、土嚢・コンクリ土台はなく、飛行機が接触すれば壊れる倒れる仕組みとなっている。

福岡空港では、1996年6月に発生したガルーダ航空機(インドネシア籍/米マクドネル・ダグラス社製/DC-10)の炎上事故。出発・滑走中にエンジン1基が停止状態と判明、機長が緊急停止、しかし、飛行機はすでに数センチ浮上しており、車輪のブレーキを効かすことができず、滑走路を過ぎ、飛行場南端のフェンスを突き破り、道路を越え(たまたま自動車通行なし)、安全のための空き地帯に入った。しかし、農道などあり若干の起伏もある空き地帯で車輪が折れ、車輪が燃料タンクを破壊し機体炎上・大破、乗員275名中3名が死亡した事故となった(エンジン両翼に各1基+後部1基の計3基)。

今回の務安空港のように、滑走路端から数百メートルのところにコンクリ製のローカライザーが設置されたり、滑走路延長線上の安全・空き地帯に屈強な構造物が設置されていたら、さらに大惨事になっていた可能性が高い。

ガルーダ航空機は2007年3月、インドネシア中部のジョクジャカルタ空港に着陸の際、ダウンバーストに襲われたと見られ、通常の3倍速以上の221ノット (409km/h)で滑走路(3250メートル)に進入、オーバーランして水田に突っ込み炎上し暫くして爆発、乗員140人中49人が死亡した事故も発生している。(別の報道では、機長と副機長が喧嘩中で、管制塔から機体のふら付きを13回も警告されたものの、機体は制御されないまま着陸したという)。

空港はオーバーランや胴体着陸を想定して開港されるべきであり、胴体着陸事例や空港での飛行機炎上事故例は世界中で山ほどある。新空港開設では福岡空港の事故例なども参考になる。
今では胴体着陸する前に、消防が事前に滑走路に撒く消火剤液にブレーキ機能も持たせている。管制官と故障機との連携も重要だが、完成と消防との連係プレーも非常に大事だ。そのために空港には専属の消防署が設置され、韓国では訓練を行っているはずだ。

<福岡空港と務安空港の相違点><ガルーダ機炎上×チェジュ機炎上>
両空港は共に海に近く、夏と冬は季節風の関係で発着が逆になると見られる。当然、滑走路の延長線上には障害物は可能な限り少ないほうがよい。
両空港とも滑走路は2800m、務安空港は外側のフェンスまで滑走路から400メートル、その外側には①周回道路が走っており、務安では南北の滑走路南端からの延長線上に周回道路から分岐して滑走路の延長線上となる①南北に道路が走っている。また西側の周回道路は幹線のようで南東に走り①と交差している。この交差点から①を北へ進めば空港ターミなルビルへ至る。
結果、ローカライザーの構築物がないとしても、オーバーラン機や胴体着陸機が失速してフェンスを突き破った場合、①滑走路延長線上に南北道路があり、滑走路南端から700メートルには①と②が接する立体道で交通量も多いと見られる。

結果、務安空港は胴体着陸やオーバーランを想定して空港が設計されておらず、ましてや滑走路延長工事で滑走路が2500メートルしか利用でないところに、チェジュ機は北側から滑走路1000メートル付近に着地、残り1500~1800メートルあまりを車輪も降りないまま、
☆ランディングギア=着陸装置=車輪は前後とも降りず、胴体着陸
★1回目の南から北向きの着陸に失敗から(車輪が降りていたかは不明だが降りていなかったと見られる)、2回目は胴体着陸を覚悟しており、空中を旋回して燃料をぎりぎりまで減らし、胴体着陸するのがセオリーだが、1回目の北方面で旋回し、今後は北から南向きに胴体着陸している。・・・燃料消費の旋回ができない機器やシステムの異常は何だったのか。
★減速のためのフラップも立てられず、
★車輪がなく左右へのハンドル機能できなく、
★減速のためのエンジンの逆噴射もできず、
減速も何もできないまま、滑走路南端から260メートルに設置された屈強なローカライザー(基礎の土嚢+コンクリ基礎の高さ2メートル+機器の高さ2メートル計4m×幅40m×奥行4m)の構築物に激突して炎上、さらに境界フェンスを壊し土嚢に至り爆発もあったと見られ、チェジュ機は前後が分断され炎上、大惨事となった。ただ、分断されたことにより最後尾にいた乗務員2人だけは投げ出され大怪我も助かっている。

韓国ではほかの空港でも同様なローカライザーが滑走路延長線上に設置されているという。似たような条件下の空港も先進国にも多くあり、そうした海外空港の安全性を取り入れて設計すべきだろう。
務安空港は、金大中のお膝元、政治家=利権家の公共投資優先策により造られた空港、計画では年間900万人利用客数が、2019年は90万人(23年は24万人)で、空港の安全設計も、管制官の質もいいころ加減になっていたのだろう。

↓福岡国際空港
滑走路延長線上の空き地も長い

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↓胴体着陸機により破壊されたコンクリ基礎のローカライザーとまだ立っているローカライザー(赤い支柱)

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↓福岡空港・ガルーダ機離陸失敗
滑走路・安全区域・フェンスを突き破り・道路・安全空き地へ。空き地の田まで進み炎上した。
乗員275名中3名死亡。
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[ 2025年1月 6日 ]

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