レクサス上海工場27年生産開始へ前進、スマホメーカーと高級車マーケット争奪へ
レクサスの上海工場の報道が具体化している。
レクサスの上海工場の報道が具体化している。中国メディアは意外に好意的な論調だ。上海でテスラとトヨタの独資100%工場が並立し、中国勢と競い合う未来が見えてきた。対抗馬には、自動車メーカーばかりではなく、スマホメーカーも挙がっている。
レクサス、中国市場で苦戦
レクサスの2024年の世界での販売台数は前年比3.3%増の85万台1214台でEVとPHVを合わせたエコカー比率は52%。
うち中国市場では同0.3%増の18万台とかろうじて前年を上回ったが、ピークだった2021年の22万7000台を大きく割り込んでいる。
中国の2024年の新エネルギー車(EV、PHEV、燃料電池車)の販売比率は47.6%だが、中国ではレクサスのEV化は緩慢と見なされている。100%輸入のレクサス車にはガソリン車のイメージが強いことによるもの。
スクロール→
中国自動車販売市場 販売台数はマークラインズ社公表値 |
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2023年 |
2024年 |
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千台 |
前年比 |
構成 |
千台 |
前年比 |
構成 |
乗用 |
26,063 |
10.6% |
86.6% |
27,563 |
5.8% |
87.7% |
商用 |
4,031 |
22.1% |
13.4% |
3,873 |
-3.9% |
12.3% |
合計 |
30,094 |
12.0% |
100.0% |
31,436 |
4.5% |
100.0% |
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EV |
6,685 |
24.6% |
22.2% |
7,719 |
15.7% |
24.6% |
PHV |
2,804 |
84.7% |
9.3% |
5,141 |
78.1% |
16.4% |
FCV |
6 |
72.0% |
0.0% |
5 |
-10.4% |
0.0% |
新エネ計 |
9,495 |
37.9% |
31.6% |
12,866 |
34.4% |
40.9% |
従来車 |
20,599 |
3.1% |
68.4% |
18,570 |
-9.8% |
59.1% |
※2024年は景気対策により、老朽車両の買い替えに対する補助金交付策により自動車販売は好調。
中国ではBYD主導で価格競争が激しさを増し、テスラもBBA(ベンツ、BMW、アウディ)も大幅値下げに踏み切っている。
市場が混沌とする中で、純EVは高級車と軽・コンパクトカーという二極化の傾向にある。
トヨタのbZシリーズ、ホンダのe:Nシリーズなど日本のEVは、その間のボリュームゾーンに展開し、消費者のニーズに合わず、苦しんでいる。廉価版は中国勢にまったく適わないことから、戦うべきフィールドは高級車マーケットとなる。
(これまでもEV大衆車は、BYDなどが価格破壊して販売台数を激増させ、テスラをすでに撃ち落しており、この領域で戦っても価格競争に明け暮れ付いていけなくなる。)
レクサスの現地生産が実現へ
トヨタと上海市政府は3月5日、カーボンニュートラルに関する包括的提携を契約すると発表した。
トヨタはこれまでに合弁相手の広州汽車、第一汽車と進めてきた環境戦略を上海市と共に深化させる。
トヨタは2035年までにレクサス全車種をEV化することを目標にしており、2030年の世界販売目標は100万台。これを達成するため、中国では上海市金山区にEVと電池の生産・開発拠点を建設する。2027年の生産開始を予定しており、年産目標は10万台を予定している。
テスラとトヨタが上海に出そろうが、上海市はフォルクスワーゲン合弁の「上海大衆」が大成功して以来、中国自動車産業をけん引してきた。レクサスはその上海に新たなストーリーを加える存在として期待されている。
★現地生産第1号は「LF-ZL」か
トヨタはこれまで、BYDと「bZ3」を開発、自動運転ユニコーン企業モメンタへの出資、ファーウェイとスマートコックピットで協力など、中国のEV技術を取り入れている。
レクサスの1号車の概要も明らかになってきている。
レクサスはジャパンモビリティショー2023でコンセプトカー「LF-ZC」を発表している。そして、トヨタは「LF-ZL」の純EV版の関連特許を中国国家知識産権局に登録申請したと報じられている。
シャープなラインで構成された力強いデザインのSUVで、新Arene OSを搭載、これが中国生産の1号車となる可能性が高い。
全長5300×全幅2020×全高1700mmで、ホイールベースは3350mm。
新型の全固体電池を搭載し、航続距離は1000km超が予想されている。
競合モデルは問界M9とシャオミYU7
その競合モデルとして、中国メディアが一致して推すのは、ファーウェイと組むセレス(賽力斯)の「問界(AITO)M9」。
★セレスは国有大手の東風汽車と関係が深い中堅メーカーだったが、2021年4月にファーウェイと提携し、ファーウェイは人員700人、年間10億ドル規模の強力な支援を行っている。
そして2021年に「問界M5」、2022年に「問界M7」を発売、いずれもヒットし、業界で一定のポジションを確保している。そして2023年に最上級モデルの「問界M9」を発売している。
問界シリーズはSUVで、「M9」は5230×1999×1800mm、ホイールベース3110mm。PHEVと純EVの2系統の動力システムを備え、ファーウェイの超融合電気駆動システム「DriveONE」で管理・制御している。
車内システムはファーウェイ独自OSの「ハーモニー」を使用。価格は49万80000元からと1000万円クラス、2024年には15万8000台を販売し大ヒットさせている。
★シャオミ(小米)は、2024年3月末に1号車の純EVセダン「SU7」を発売。こちらも2024年に13万5000台を販売するヒットとなっている。今年は2号車のSUV「YU7」が6~7月に市場投入される見込み。
シャオミは2025年の販売目標をSU7とYU7合わせて36万台を設定している。しかし、業界では45万台を超えると予想している。
シャオミは2024年12月にYU7の実車を公開。中国メディアは「テクノロジーの美学とスポーツ性を結合した外観で、強力なパワーとインテリジェントは衝撃的」と評した。公表サイズは4999×1996×1600mm、ホイールベース3000mmで、価格は30万~40万元(約600万~800万円)になるとみられる。
上位グレードのデュアルモーター版は合計出力691馬力、最高速度253kmに達し、比類のない加速体験をもたらす。
<スマホメーカーとの戦い>
ファーウェイとシャオミは新興自動車勢力として成功を収めつつある。
スマホショップに実車を展示するなど、強力な販売網や幅広いファン層の存在は大きなアドバンテージと成っている。
さらに、通信機器メーカーとしての高度な技術的バックボーンはスマートカーの開発にプラスイメージを与えている。
実際に若い富裕層にアピールし、BBAなど欧米高級ブランドの牙城を切り崩しつつある。レクサス上海はテスラやBYDはもとより、ファーウェイやシャオミなどの巨大スマホメーカーとも争うことになる。見どころの多い異次元の戦いになりそうだ。
以上、レコードチャイナ参照