乱高下する株式市場 わずか1日で天国から地獄 投資判断に試練
11日午前の外国為替市場では、ドル/円が一時142.88円まで下落し、約半年ぶりの円高水準を記録した。米国による対中関税の強化報道が伝わると、リスク回避の動きが再燃。米10年債利回りは4.48%付近まで上昇し、米株先物も下落に転じるなど、市場全体に警戒感が広がっている。
東京株式市場もこれに反応し、日経平均株価(225種)は一時、前日比で1900円超下落し、3万2600円台に沈んだ。前日10日には、米利下げ期待や半導体株の急騰を背景に、2894円97銭(+9.13%)の大幅高を記録したばかり。わずか一日での乱高下は、投資家心理の脆さを浮き彫りにした。
個人投資家の中には、前日の“爆上げ”を見て後追いで買いに入ったケースも少なくない。証券会社関係者によると、「ネット証券経由の短期売買が急増しており、ボラティリティの高い銘柄に個人資金が集中している」という。FOMO(取り残されることへの恐怖)心理が先行し、材料やファンダメンタルズよりも“話題性”や“雰囲気”で売買が行われる傾向が強まっている。
一方で、こうした急騰直後の買いは高値掴みにつながりやすく、翌日の急落で損切りを余儀なくされるケースも続出。SNSや掲示板には「買った直後に暴落した」「X(旧Twitter)の情報に乗って失敗した」といった書き込みも見られ、情報の取捨選択力と売買判断の冷静さが問われる状況だ。
市場関係者は「投資はあくまで自己責任。上昇相場に惑わされず、シナリオを持って臨むべきだ」と注意を呼びかける。特に新興投資家層は、“上がっているから買う”という感覚から脱し、長期的視点やリスク管理の重要性を再認識すべきだろう。
今後の焦点は、米インフレ指標やFRB高官の発言。金利や為替の変動をにらんだ慎重な姿勢が求められる。市場の波は、勢いに乗る者だけでなく、冷静に耐える者にも利益をもたらす——そんな相場が今、戻ってきている。