ボルボ、1750億円の減損計上 米国市場から撤退の危機
スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーが、米国市場の混乱に直面している。同社は7月14日、2025年4~6月期に114億クローナ(約1750億円)の減損損失を計上すると発表。主因は、米国の関税強化とEV販売の伸び悩みだ。
ことの発端は、トランプ大統領による関税政策の再始動だ。就任直後から「アメリカ・ファースト」を掲げ、各国に対して一斉に関税を強化。とりわけ中国製品に対しては報復的な水準の関税を課し、その影響がグローバル企業に広がっている。
EV「ES90」、米国では売れず ボルボが白旗
ボルボは新型EV「ES90」について、「現在は米国で利益を出して売ることができない」と公式に表明した。ES90は中国で製造されているが、トランプ政権が中国製EVに100%近い関税を課したことで採算が完全に崩壊した。
この結果、ボルボは米国市場でのEV展開に急ブレーキをかけ、今後の戦略見直しを迫られている。5月には事務職を中心に約3,000人の人員削減を発表しており、影響はグローバルな雇用にも及び始めている。
トランプ関税がEVシフトを逆流させる
EVは気候変動対策の切り札として各国政府が支援してきたが、貿易戦争がその構造に亀裂を入れている。
「クリーンエネルギーで世界をつなぐ」はずのEVが、今や「国と国を分断する象徴」になりつつある。米国が自国製造を守るために中国製品に高関税を課せば、報復措置やサプライチェーン分断が連鎖し、EV市場の健全な成長が遠のく。
実際、トランプ政権下では、欧州や日本企業にとっても米国向けのビジネスが難しくなっており、自由貿易体制が音を立てて崩れ始めている。
トランプの関税は、米国を強くするか?
トランプ氏は「米国第一」で関税を武器に各国と対峙しているが、それは結果的に米国の消費者や企業にもコストとして跳ね返っている。今回のボルボの件は象徴的だ。
関税で守れるのは一時的な産業保護にすぎず、中長期的には市場の混乱と技術革新の停滞をもたらす。気候変動と産業競争の二正面作戦が求められるこの時代に、関税という“古い武器”が最適解とは思えない。
グローバル企業が次に動く先は、「関税リスクのない地域」だ。果たして、それが米国であり続けるのか――今、問われているのはトランプ氏の政策ではなく、そのビジョンの持続可能性だ。





