アイコン 【EVリコール】三菱・日産の軽EVにブレーキ不具合 ──試される「EV時代の信用インフラ」


三菱自動車は6月12日、軽自動車タイプの電気自動車(EV)「eKクロスEV」および日産自動車にOEM供給している「サクラ」計4万1134台(2022年5月~2023年3月製造)について、ブレーキ部品の不具合によりリコールを国土交通省に届け出た。

制動装置である「ブレーキマスターシリンダー」のピストン形状が不適切で、ブレーキが意図せずかかり続けたり、逆に走行中に解除されたりする恐れがあるという。すでに後続車の追突による人身事故が1件確認されており、被害者は精神的な影響で通院を余儀なくされた。

 

一時の不具合が、EV市場全体の信頼を揺るがす

今回のリコール対象となった2車種は、いずれも「実用性の高い都市型EV」として注目を集めた人気モデルである。特に日産「サクラ」は、EV普及の突破口として期待され、軽自動車としての扱いやすさと価格の手頃さで、EV入門層への訴求力が高かった。

そうした中での重大な制動系トラブルは、単なる品質問題にとどまらず、「EVは本当に安全なのか?」という消費者の根本的な疑問を呼び起こす。EV普及に対して慎重な層にとっては、「やはりガソリン車の方が安心」と逆風に働く可能性すらある。

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開発スピードと品質管理のバランスが崩れていないか

自動車業界は現在、脱炭素の流れに沿って急速なEV化を進めている。しかしその一方で、短期間での新モデル投入や価格競争の激化により、部品調達から検品までのプロセスに見落としが生じるリスクも高まっている。

今回の不具合はピストン形状の設計に起因するものとされており、製造・品質管理・出荷段階のいずれかでチェック体制に問題があった可能性がある。特に安全に直結するブレーキ系のトラブルは、EV時代においても「ハードの信頼性」が不可欠であることを改めて突きつけている。

 

OEM供給関係で浮かぶ“責任の分岐点”

リコールは三菱が届け出たが、OEM供給先である日産の「サクラ」も対象であり、今後の対応次第では、ブランド価値や顧客満足度に大きな影響を及ぼす。OEM供給が拡大する中で、製造側・ブランド側双方がどこまでリスクを管理し、情報開示の責任を果たすかが問われている。

消費者が安心してEVを選べる社会を築くには、「どこのメーカーの、どのラインで、どの部品が作られ、どう品質が保証されているのか」という透明性こそが信頼の土台となる。

 

 EVは未来のインフラ 信頼構築は急務

EVは環境対策の主役であると同時に、高齢社会における移動手段、地方交通の再設計、そしてエネルギー政策とも密接に関わる「社会インフラ」でもある。

その普及を持続可能にするためには、単なる“未来のクルマ”ではなく、“安全な道具”としての信頼構築が欠かせない。リコールの早期対応は当然として、再発防止策と説明責任、そして何より、今後のEV開発における「品質優先の思想」が、いま改めて問われている。

 

[ 2025年6月13日 ]
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