アイコン 北朝鮮、国連制裁決議違反を承知で弾道ミサイルを発射。その狙いは?

 

 

北朝鮮がやってくれました。

北朝鮮、そうとう、追い込まれてるようです。

食料不足で国民が飢えて餓死しようがしまいが、関係ない、と言わんばかりのカリアゲ君の暴挙を見ていると、2歳児の子供を見ているようだ。

こんな人物の下で飢えにあえぐ北朝鮮国民が憐れでならない。

きょうも、(農と島のありんくりん)を読んでみてください。

スポンサード リンク

農と島のありんくりん
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/

移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する

2019年5月 6日 (月)

北朝鮮、国連制裁決議違反を承知で弾道ミサイルを発射。その狙いは?

0507_01.jpg

北朝鮮がやりましたね。シンガポール会談以降、なんの成果もないくせに漠然として漂っていた融和ムードが、これで完全にご御破算となりました。

苦々しげにそれを報じる朝日(2019年5月5日 ) です。
https://www.asahi.com/articles/ASM5545GJM55UHBI00N.html

「北朝鮮の朝鮮中央通信は5日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が4日に、日本海上での軍事訓練を指導したと伝えた。

韓国軍が同日発表していた北朝鮮による日本海への飛翔(ひしょう)体発射を指すとみられる。

韓国の軍事専門家は、公開された写真の分析から、国連安全保障理事会が制裁決議で禁じる弾道ミサイルが発射に含まれていたとの見方を示した。

 同通信によると、訓練は新型の大口径の長距離放射砲(多連装ロケット砲)と戦術誘導兵器の性能の確認が目的。正恩氏が発射を命じた。公開された写真には発射の様子が映っていた」

「朝鮮中央通信(KCNA)は「(このミサイルは)北朝鮮に攻撃を試みるあらゆる敵性艦隊を思うがままに地上から攻撃できる強力な攻撃手段」「(同ミサイルは)東海(East Sea of Korea、日本海)に浮かぶ標的を正確に検知し、命中した」と報じた」(AFP5月5日)

北が公表した動画にはミサイル発射に立ち会う正恩が写っており、正恩の直接の指導の下に行われた確信犯的違反だと分かります。

これは決議1874、決議2087、決議2094、決議2270、決議2321、決議2356、決議2371、決議2375、決議2397 に違反します。

朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁 - Wikipedia

また、韓国と北朝鮮が結んだ南北軍事分野合意も、これで一方的に廃棄されたと見るべきです。

これを弾道ミサイルと呼ぶとムン・ジェインが営々と積み重ねてきた対北融和路線が根底的に覆りかねないとみたのか、韓国政府は「あれは弾道ミサイルじゃないよ、飛翔体かただのミサイルだよ」と訳のわからないことを言い出しています。

ムン閣下にはお気の毒ですが、これは紛れもなく弾道ミサイルで、しかも明確な国連制裁決議違反の上に、韓国全域を射程範囲に置いたものですから、韓国国民の頭上に落ちてくるモノかもしれません。

0507_02.jpg

発射された弾道ミサイルの種類は、ロシアのコピー品と見られる近距離弾道ミサイル「イスカンダル」もどきです。下の写真のように中膨れのズングリした特徴的な形状をしています。

0507_03.jpg

5月4日、「火力打撃訓練」で発射された短距離弾道ミサイル「イスカンダル」 朝鮮中央通信

イスカンダル(9K720) は従来北が保有していたスカッド系ミサイルと比較して、段違いに優秀な弾道ミサイルです。

ちなみにネーミングのイスカンダルは、宇宙戦艦ヤマトとは関係なく(ありたまえだ)、アレキサンダー大王の異称のことです。

0507_04.jpg

9K720 - Wikipedia

イスカンダルは、ロシアの最新鋭の短距離弾道ミサイルで、以下の特長を持っているといわれています。

①射程距離400km以上の短距離弾道ミサイル(CRBM)。

②DMZ付近に展開すれば韓国のほぼ全域が射程範囲に入る。

③移動式装輪車(TEL)に2発まで搭載可能。

④固定燃料を使用。液体燃料方式と違って、命令があり次第直ちに発射可能。 

では北は国連制裁決議を公然と破って(韓国との合意破りなど屁とも思わないでしょうが)、なぜこの時期に弾道ミサイル、それも短距離の精密誘導が可能なそれを発射したのでしょうか。

日本のメディアは今回のイスカンダル発射を、「北が米国を対話に引き出すための挑発」というトーンで伝えるでしょうが、間違っています。

正恩はムンのようなデイドリーマーではありませんから、トランプの好意に一縷の望みは繋いでいるでしょうが、仮に第3回米朝会談が開かれても第2回よりもはるかにハードルが高く、決裂する可能性は高いと読んでいるはずです。

ハノイ会談ほどの成果が出ず、しかも3度目の決裂はシャレになりません。平和的手段での「非核化」(する気なんかありませんが)は投了ということになります。

その場合、ボルトンとポンペオはトランプに軍事オプションの進言をせねばならない立場となるでしょう。

その場合、北にとっての最大の軍事的プレッシャーである米海軍空母打撃群が、朝鮮半島近海に再び姿を見せることになります。

正恩は、これに対して「寄るな・触るな・近寄るな」と言いたいのです。

北朝鮮自身、この北朝鮮版イスカンダルが精密誘導可能な地対艦弾道ミサイルだということを北朝鮮自身、いまや大っぴらに「攻撃を試みるあらゆる敵性艦隊を思うがままに地上から攻撃できる強力な攻撃手段」(朝鮮中央通信)と明確に言っています。

この5月4日の発射実験時の正恩の写真のバックにも、目標とおもわれる艦艇が写り込んでいます。

今に始まったことではなく、北は2018年11月16日の「先端戦術兵器の実験」以降、鮮明に米国の空母打撃群を目標においています。

去年秋以降、北はイスカンダルの実践配備に拍車をかけて、今年4月の部分的試射、そして今回の5月4日の本格発射実験を行いました。

0507_05.jpg

朝鮮中央通信

「寄るな・触るな・近寄るな」とはA2AD(接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)とよばれて、中国軍が定式化したものですが、この北朝鮮版と思えばよいとおもいます。
接近阻止・領域拒否 - Wikipedia

「《A2/ADは、Anti-Access/Area Denial の略。接近阻止・領域拒否の意》米国に敵対する国や勢力が用いる軍事戦略で、自国や紛争地域への米軍の接近や、そうした地域における米軍の自由な行動を阻害すること」(デジタル大辞泉)

北朝鮮は、祖父の金日成時代に引き起こした朝鮮戦争において徹底的に米国空母からの空爆で痛めつけられました。
以来、北朝鮮軍主力は地中に潜っていますし、虎の子の弾道ミサイルも移動式にして山中から発射できるように努めています。
これは裏返せば、いかに米軍の空爆を恐れているかということの証です。

特に正恩が震え上がったのは、2017年秋に米空母が3隻、朝鮮半島海域に同時に登場した時です。

0507_06.jpg

おそらく当時からイスカンダルの開発には努めていたはずですが、政治的駆け引きの道具でしかない大陸間弾道ミサイルより緊急度が高いと判定したのかもしれません。

では、このロシアからパクったイスカンダルもどきは、有効な接近阻止・領域拒否を張れるでしょうか。
米国は脅威度が高まったと認定するし、対策は立てるでしょうが、それだけです。

というのは、現在、世界で数少ない米国空母打撃群を対象にした「空母キラー」(地対艦弾道ミサイル・ASBM anti-ship ballistic missile)は、中国が開発した「東風21D」(DF21・射程1500キロ)しかありません。

0507_07.jpg

これも実際に使用されたことはなく、果たして空母打撃群がどこに存在するのか捉えられるかさえ危ぶまれています。

前にも書きましたが、米空母打撃群は、実戦段階が近づくと完全な無線封鎖止をしてしまい姿を消してしまいますので、どこにいるのかまったく分からなくなるはずです。

それを索敵するためには宇宙からの偵察衛星か、空中からの偵察に頼るほかはありませんが、北にその能力は皆無です。

となると正恩さん、あんたお宝のイスカンダルをどこに向けてブチ込むんでしょうかね。

仮にまぐれでその位置が分かったとしても、艦隊自体が回避行動をとったり、イージス艦からは弾道ミサイル防衛(MD)がなされるでしょうから、いっそう命中は厳しいでしょう。

つまりは、北はパクった技術のお披露目をしている段階のルーキーにすぎません。
したがって、米空母打撃群の位置を精密に探り出し、正確無比の誘導で、MDを避けて命中できるとは到底思えません。

唯一、米空母打撃群を本気で撃滅したいのならば、米艦隊がいると思われる一定の海域の面に対して飽和攻撃をかけることです。
飽和攻撃とは、イージス・システムが対応できる数倍の数の対艦ミサイルを雨と霰とばかりに降り注ぐ攻撃方法のことですが、そもそも北がそんな数のイスカンダルを揃えるのは夢のまた夢でしょう。

結果として、今回の正恩のイスカンダルの発射実験は、絶望的状況をいっそう絶望に追い込んだことにしかならないと私は思います。

 
[ 2019年5月 7日 ]

 

 

 

関連記事

 

 

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   
スポンサード リンク
 


PICK UP


PICK UP - 倒産