デニー知事が蒸し返した一国二制度
デニー知事には呆れるばかりです。もう空いた口が塞がらんとはこのことを言うのでしょう。
きょうも、(農と島のありんくりん)を読んでみてください。
はっきり言って正真正銘の(あんぽんたん)です。
こんな(あんぽんたん)を知事に選んだことを10年後の沖縄県民はどう総括してるだろう。
農と島のありんくりん
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移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する
2019年3月25日 (月)
デニー知事が蒸し返した一国二制度
さほどの皮肉でもなく、この人面白いですね。いやなにデニー知事のことてす。慎重に一線を超えなかった故翁長氏とはえらい違いです。
応援団の朝日新聞系だという気安さから、デニー知事はアエラ(3月5日)で、おいおい知事の立場でこんなこと言っていいのかと心配するくらい軽快にしゃべりまくっています。
https://dot.asahi.com/aera/2019030400061.html?page=1
「多くの県民が望むのは、政府から『これだけの財源と権限で沖縄の行政をしっかりやって下さい』と任される一国二制度です。
沖縄の地理的優位性を生かして、アジアに向けた日本の玄関口、日本の中のアジアのフロントランナーとしての位置づけを明確にしたい」
中国からも東南アジアからも近い沖縄を経済や文化交流の中心にする──。玉城知事はさらに続ける。
「例えば沖縄にいる自衛隊が、アジア各地の災害に真っ先に駆けつけるという存在になれば、諸外国から信頼と安心感を持って受け止められるでしょう。独特な歴史、文化、地理的特性をもっている沖縄だからこそ、一国二制度に移行すれば日本にとっても沖縄にとっても将来展望がより広がると思います」(アエラ3月5日)
なんだデニーさん、やっぱり一国二制度を言っているじゃありませんか(苦笑)。
「玉城氏が今年(2018年)5月の衆院内閣委員会で、安倍晋三首相に質疑を行った際の一場面だ。
玉城氏は次の言葉で質問を締めくくった。 「最後に総理に要望を申しつけたいと思います。
沖縄を『一国二制度』にして関税をゼロにし、消費税をゼロにする。
そのぐらい大胆な沖縄の将来を見越したそういう提案もぜひ行っていただきたい」(ZAKZAK有本香2018年9月28日)https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180928/soc1809280011-n1.html
選挙戦時には、デニー陣営は必死にこれを打ち消していて、デマだとまで言っていましたが、国会議事録にも乗っているようですし、知事になって口が軽くなったのか、アエラでやらかしてしまいました。
選挙戦の時は、アレもデマ、コレもデマと決めつけていましたが、知事になったとたんこれですから脇が甘いことです。
まぁ口の軽さが彼の「魅力」でもあり、反面命とりにもなるような気がします。
「一国二制度」を定義すればこのようなことです。
「一国の中に、政治制度・経済制度の 根本的に異なる地域が複数ある状態」 、
日本に引きつければ
日本国の主権下にありながら、政治制度と経済的独立を持つ一定「領土」と「国民」を持つ沖縄地域
この一国二制度自体は、とりたてて新しい思いつきではありません。
それどころか1997年に香港が中国に施政権が委譲されて以来、さんざん中国政府のいいように使われていた陳腐なプランでしかありません。
今どき、世界でもこんなシロモノをさも新しげに引っ張りだすのは、デニー氏くらいなものです。
「国際関係及び軍事防御以外の全ての事柄において高度な自治権を有することを規定している。
なおこの自治権は中国中央指導部の委任・承認に基づき地方を運営する権限であり、完全な自治権、地方分権的なものではないとされる(2014年6月10日中国国務院白書)」Wikipedia香港
内実は「高度の自治」どころか、中国共産党が香港の完全支配を完了するまでの眼くらましとして考えられたプランにすぎません。
雨傘革命 http://com21.jp/archives/21988
雨傘運動は、中国政府による香港市民の政治的自由を制限しようとする抗議行動として始まりました。その期間は実に2014年9月から79日間も続き、その間の逮捕者は、955人に達しました。
また事後逮捕も、指導的人物らが48人が逮捕されています。
立法議会への立候補者は、中国共産党の実質的支配下にある香港行政府が事前審査し、立候補資格を決定します。
ですから、中国政府の対香港政策を批判したりするような言辞をする候補は、そもそも選挙にすら出馬できません。
立候補を認めないとする選管の通知書を手にする民主派候補https://withnews.jp/article/f0181220000qq000000000... ある女性候補は「香港の将来の政治体制は独立を含めて香港人が決める」という立場をとっていました。
これは自分たちが将来を決める立場なことからから「自決」と呼ばれ、香港の若者の間では多くの支持を得ています。
「香港の選管は10月中旬、劉さんの立候補を認めないという決定をしました。「劉さんは香港独立を選択肢の一つにしており、香港は中国の一部という規定を受け入れていない」と判断したからです。
劉さん自身は立候補の直前、香港独立を支持しないと明言しましたが、それでも過去の主張が問題視されました」(益満雄一郎2018年12月20日)
これは一般的に日本人が考えてしまうような親中派か反中派かというレベルの問題ではなく、民主主義の根幹である自由選挙制度を守るか否かの戦いでした。
このような香港での一国二制度の現実を知ってか知らずか、こんな制度を日本に導入しろ、というのがデニー知事の提案のようです。
日頃「沖縄の自決権」とか「琉球独立」などと言っている人たちが、この中国発祥の制度のシンパサイザーであることは皮肉です。
いや待てよ、デニー知事はこうも言っているではないかという声も聞こえます。
「一方で、日本からの独立は全く頭にないという。
「我々はウチナーンチュであると同時に、日本人なのです」(アエラ前掲)
デニーさん、あたりまえのことをもったいぶって言いなさんな。沖縄県民が日本人でなければ、いったいなんなのです。
なるほど、デニー知事が提唱する一国二制度の受け皿は、現在は日本国である以上、中国と違って民主的諸権利は確保されています。
したがって、デニー氏はこう言いたいようです。
「本土の皆さんが危惧するような琉球独立は考えていませんよ。沖縄全県を特別区にしてほしいだけです、その手始めに消費税の免除なんかいかがでしょうか」と聞こえるようにしゃべっています。
ほんとうにそうでしょうか?
お米の炊き方ではありませんが、初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋とるなではありませんが、初めは消費税減免程度で本土政府の顔色をうかがって、しばらくすれば法外な要求をすることになるのは目に見えています。
というのは、現時点でのデニー知事の一国二制度には原型があるからです。
かつての民主党が政権交代直前に出した、2008年「民主党・沖縄ビジョン」がデニー氏の元ネタです。
この「沖縄ビジョン」には、当時民主党沖縄県連の有力国会議員だったデニー氏が強く関与していました。
そこには、狭い地域一都市ではなく、一県丸ごと自由化特区にするということが書き込まれています。
そしてアジア情勢とは無関係に、米軍基地を一方的縮小することを提唱しています。
今回、デニー氏はこんなことを言っています。
「例えば沖縄にいる自衛隊が、アジア各地の災害に真っ先に駆けつけるという存在になれば、諸外国から信頼と安心感を持って受け止められるでしょう。
独特な歴史、文化、地理的特性をもっている沖縄だからこそ、一国二制度に移行すれば日本にとっても沖縄にとっても将来展望がより広がると思います」」(アエラ前掲)
やれやれ、こんなていどの安全保障の理解度で国会議員やっていたのですからね。
真面目に対応するのがばかばかしくなります。
自衛隊が沖縄に配備されている一義的目的は、沖縄の安全保障を守ることにあります。
アジアの災害に真っ先に駆けつけることは、自衛隊に余裕がある状況における付帯任務でしかありません。
そもそも海外の災害派遣といっても沖縄の部隊が対応するという決めはなく、全国でそれに適した部隊が命じられます。たとえば輸送には小牧のC130部隊、捜索・復旧には各旅団の施設科中隊が送られることになるでしょう。
しかしそれもあくまでも国防が主であって、救援隊は従です。
デニー氏が言う「諸外国からの信頼と安心感」は、災害援助をして初めて得られるのではなく、アジアの安全保障環境の一角を担って安定させているからこそ得られるのです。
そんなことは、沖縄の隣の島国の台湾やフィリピンに行けばすぐにわかることです。
これでわかるようにデニー氏は、自衛隊という国防組織を、国の安全保障をアジアの視野で捉えておらず、「大戦中に悪行を働いた日本が、自衛隊を災害派遣することで贖罪できる」とでも考えているようです。
このような安全保障に対する幼稚な考え方は、野党に共通のものですが、共産党の自衛隊違憲解体論と五十歩百歩です。
それはさておき、民主党沖縄ビジョンは、米軍基地の一方的縮小や移民の大量導入、外国人参政権付与、ビザの免除による東アジアとの人的交流の促進、中国語の学習の活発化などをうたっています。
デニー氏は「アジアに向けた日本の玄関口」という言い方をしますが、ここで想定しているのはもちろん中国です。
沖縄ビジョンでは中国から大量の移民に門戸開放すると書かれています。
沖縄の人口は約130万人。
しかも大量の失業者、半失業者がいるこの狭い島に中国を中心として年間3000万人受け入れようというのですから、正気の沙汰ではありません。
民主党政権時に、この一国二制度が実施されていたら、現況で7千人から1万人以上と言われる中国人居住者はその数十倍に膨れ上がり、この狭い島は事実上「中国人の島」と化していたことでしょう。
そして民主党は同時に外国人参政権を推進しようとしていました。
デニー氏はこの推進派のひとりでした。
沖縄ビジョンが実体化して大量移民が実現してしまい、さらにはその移民に参政権が与えられた場合、米国に実例があるように中国人は自らの議員を各級議会に送り出し、さらには知事の椅子に座らせたことになったかもしれません。
言い換えれば、かつての民主党沖縄ビジョンは、中国人による沖縄乗っ取り推進案とでも言うべき性格をもっていたわけです。
民主党が3年半で政権から転がり落ちたことは、沖縄にとってまことに幸いでした。
と思っていたら、デニー知事がまたぞろ民主党沖縄ビジョンの亡霊を蘇らせようと言い出したのですから、まったくやれやれです。
この一国二制度もまた、政府が呑む可能性はゼロです。
しかしかデニー氏個人がいかに自分は「日本人だ」と考えていても、ひとたびこのような制度的枠組みを作ってしまえば、枠組み自体は残ります。
その場合、県条例がそのまま沖縄県の内政そのものとなるような「高度の自治権」の前段階に到達することになります。
今までどおり財政基盤は本土政府にべったり依存しながら、好き放題の「内政」をすることが可能なのですから、こたえられません。
たとえば、アイヌ新法をより過激化させた沖縄民族先住民法などを県条例で作って施行することも、県民直接投票を現状のように法的裏付けをもたない形から、行政化できるような法改正も自由自在に出来るようになります。
本来の一国二制度は、国防と外交は国の専管事項で県は関与出来ない建前ですが、現状でも米国との安保協議に沖縄を加えろと言ってみたり、在米沖縄大使館まで作ってしまっているていたらくですから、なにをかいわんやです。
ただし、カネだけは今までどおりに出せよ、というのですからそのダブスタぶりには呆れます。
世界で独立を目指す地域はスコットランドやカタルーニャ、あるいはクルドにしても、しっかりした経済基盤を持った地域です。
だから中央政府から独立しようと望むのであって、経済的自立にほど遠い沖縄が独立国の夢を見てどうするのかと思います。
こんなハンパな「独立国」は、やがて中国圏へと急速に引き込まれ、日本ではなく中国による一国二制度の支配に置かれるようになることでしょう。
現状では、例によってデニー知事の一国二制度案は机上の空論にすぎません。
いや机上ですらありません。
県政与党の議論のテーブルにすら登っていないからです。
私たちとしては、この愚論がどのように県政与党に受け止められていくのか、慎重に観察するとにいたしましょう。