アイコン 財政破綻のスリランカ、日本にスリヨランか 7年後には元の木阿弥か


スリランカの財政破綻は、返済原資の根拠もなく、中国からのインフラ投資を全面的に受け入れてきたこれまでの政権にある。当然、国民も政府の巨額投資に酔いしれ、政権を支え続けてきた。

しかし、今般の新コロナ事態、国家収入は大幅減、元々大きな対外債務に中国のインフラ投資と平行して自己調達した対外債務も上乗せられていたことから、返済不能状態に陥っている。
また、疲弊した新コロナ経済に対する各国の経済回復のための財政投資、特に米国の巨額投資、および、今年3月の露制裁によるエネルギー価格の暴騰による国際商品価格は高騰した。

米国が本格的にインフレ退治に乗り出したため引き起こされたドル高・為替安によるWでの国際商品の国内価格上昇により、資源を持たない新興国の経済は極めて厳しい状況に陥っている。 それはインフレ退治による金利高で米経済が本格的に落ち込むまで続くが、米国では2年に一度の総選挙があり、米政権は政権勢力の維持のため、国民のご機嫌取りに動く必要があり、金融引き締め=高金利はいつまでも続けられない事情もある。(米政権・金融当局は、今年いっぱい金融引き締めを行い、その効果により、早晩、金融引き締め度合いを弱めると市場は見ている。)

国民はどこの国でも全国津々浦々に公共投資をばら撒いてくれる大統領を神様のように称え、大統領もまた称えさせるように国民に餌を与え続け、権力を集中させ長期政権を計る。

結果、スリランカでは、残ったものは堆く積もった債務の山、国民は今回のように債務処理で緊縮財政を計る大統領が就任したとしても、再びバラ撒き政権に変更させる。
民主主義が成熟していないほとんどの国の民主主義もそうしたものだ。

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共産党独裁国家の中国が、そうした民主主義のシステムの問題を逆手に取った一帯一路軍事覇権戦略。新興国に対するインフラ投資政策は、
「線」は、南シナ海の要塞-オーストラリア・ダーウィン港-スリランカ・ハンバントタ港-パキスタン・カラチ港-アフリカ・ジブチ港-ギリシャ・ピレウス港)、
「点」は中南米、
「面」はアフリカ・南太平洋・アフガン含む中央アジアで構成され、
「線」も「点」も最終的には面へ移行させ、面を拡大させていく構想、中華思想による覇権を貫徹させていく動きとなっている。

今回、スリランカの財政破綻は中国派の大統領たちによりなるべくしてなったもの。
世界通貨基金「IMF」は、中国を気にしてスリランカに各国の債務をカットするよう指示している。
ギブアップした国、本来、IMFが主導して債権国を召集し、財政再建させる手立てを、債権国を主導して図らせるべきだろうが、IMFが前回介入したパキスタンでは、中国が債務カットに応ぜず、借金の漬物国として管理下においたまま、中国が、別途、緊急融資と債務返済の繰り延べさせることにより、パキスタンは難を逃れさせた経緯がある。

そうしたこともあり、中国に対して関係を持ちたくないIMFは、スリランカ政府自身に対して債務カットの要請のすべてをなさせている。
当然、最大の債権国である中国は応じる意志を示していない。

(中国はスリランカへのインフラ投資の当初からの計画、スリランカの借金弁済を軽減させるためで中国がスリランカへの貸付でインフラ投資した同国最南端のハンバントタ港を2017年から99年間借用している。さらに中国の貸付金=インフラ投資で前大統領の出身地の田舎に開発した国際空港の99年間借用も狙っている。当然それはインド包囲網の一環でもある)

現行の統一国民党のラニル・ウィクラマシンハ大統領(インド派)は、中国派のラージャパクサ(弟)前大統領が連日の暴動に海外逃亡したことから発足しており、中国はIMFが求める債務カット交渉にも応じる気配はない。

そのため現政権は、第2の債権国である日本に対して、債務カットの調整役をしてくれるよう、大統領が来日して要請するという。

ただ、同国には、中国からのインフラ投資を推進し続けたシンハラ人に影響力を持つラージャパクサ(兄)元大統領が、軍基地内に逃げており、いつ復活するかわからない。
(1)シンハラ人(74%、仏教徒が主)×タミル人(18%/ヒンドゥー教徒が主)の対立、
(2)仏教徒(70%)×イスラム教徒(10%)の対立、
(3)シンハラ人でも恩恵を受ける地域と疎外されている地域との対立もある。

2005年就任したマヒンダ・ラージャパクサ大統領(兄)は、北部で武力闘争を展開するタミル解放戦線を、中国軍とパキスタン軍の支援を受け2009年までに壊滅させた。
その功績もあり2015年まで大統領に君臨(3選禁止憲法)、その後も首相に2回就任して院政を行使してきた。
2009年に全国統一を果たしたラージャパクサは、中国からのインフラ投資を呼び込み、経済を浮揚させるとともに、国政に一族を多用し支配、それでも多くの国民がラージャパクサを支持してきていた。

ラージャパクサ元大統領(兄)はシンハラ人に絶大な支持基盤を持ち、軍を私兵のように操っており、今回、一時的にインド派のウィクラマシンハ大統領が就任し、財政を立て直したところで、その後続く、IMFが介入した緊縮財政に耐えかね国民は、再び、銭バラ撒き型の中国派を大統領に就任させることになる。そして、中国がスリランカ政権をこれまでのように操縦するようになる。

最悪は、債権カットして借金減らしに成功した暁に、軍を支配している兄のラージャパクサがクーデターを起こし、再び支配する可能性もある(首相退任後、軍基地の中に避難しているという)。海外へ逃亡後、辞任を表明したラージャパクサ(弟)前大統領も、8月24日に帰国するとの情報も流されている。

国家再生に向けた債権カット交渉は、スリランカが自国で行うべきラージャパクサ兄弟の隠し財産含む全財産の没収、政権に加担した一族の財産没収、ラージャパクサ兄の軍への影響力を排除後に、なすべきではないだろうか。
スリランカがミャンマー化しないとは断じえないのが現実だ。

日本は、東アジアだけで目いっぱい、「君子、危うきに近寄らず」は、国際政治の鉄則だ。今に続く、度を過ぎる金魚の糞政策はろくでもない結果しか招かない。

債権カットも中国がカットしない限り応じることは厳禁だ。
ビルマ(ミャンマー)では、民主化に伴い日本政府は同国に対して保有する巨額債権をカット(国民の税金)、しかし、軍事クーデターで日本の狙いは粉砕された。長期的な視野もなく、近視眼的な対応の結果でもある。裏では常にほくそ笑む中国がいる。

中国はスリランカに対して政府系金融機関の債権と中国のゼネコン等が持つ別途債権があり、実際の債権は、さらに大きいとの見方が大勢を占める。
中国の借金にしてもインフラ投資による借金漬物国化、当市国に対する政権支配=覇権主義の結果であり、守銭奴のような銭で相手国を支配するやり方は、いずれ破綻しよう。
しかしながら、米国がいくらち中国と対立しても、米国は中国へ巨額の利益をもたらし続けており、覇権はとどまるところを知らない。

新冷戦時代に至り、政治も経済も混沌の世界が続く。
日本政府は、スリランカ問題はIMFに任せ、大局的かつ長期的展望に基づき対応するのが、日本にとっての国益ではないだろうか。


スクロール→

スリランカ/人口:2192万人

 

単位

7

6

5

基準利率

14.5

14.5

13.8

貸出金利

 

22.6

22.1

インフレ

60.8

54.6

39.1

コアインフレ

 

39.9

28.4

食料インフレ

90.9

90.9

80.1

生産者物価指数

 

 

227

216

輸出

百万ドル

 

1,248

1,047

輸入

百万ドル

 

1,226

1,451

貿易収支

百万ドル

 

21

-404

経常収支

百万ドル

3

-1,331

 

外貨準備高

百万ドル

 

 

1,920

対外債務

百万ドル

3

50,593

 

送金入り

百万ドル

2

205

 

観光収入

百万ドル

2

174

 

失業率

 

3

4.3

 

若年失業率

12

23.8

 

 

スリランカの対外債務(単位:百万ドル)

2009年内戦を終了させ、その後の中国によるインフラ投資により対外債務は2020年まで増加し続けている。2017年以降は債務返済の資金確保に急増、高金利の国債発行による資金調達は命取りになっている。

新コロナ事態では中国は新規対外インフラ投資どころではなくなり、スリランカ含む新興国へワクチンを低額販売、スリランカではさらに対中債務を増加させてきていた。

↓現在明らかになっている対外債務は、昨年4月とでは大きく異なり、同国の対外債務の実態は不明。

もしも中国政府が債務カットに応じたとしても、中国企業の債権は別物とすれば、巨額の企業債務の元利弁済をスリランカ政府はし続けることになり、いくら財政緊縮策から資金を捻出しても、公務員の賃金等へ影響は避けられなず、中国へ資金が流出し続けることになる。

西側の推定では中国の債権は総額150億ドルとの見方もなされている。少なくとも下記表での中国への債務は倍以上と見られている。

なお、日本の債権についても、日本が有する債権は62億ドルと推定されると報じられている。

 


スクロール→

スリランカ対外債務/百万ドル

2021/4月末残高、スリランカ財務計画省版

 

34,675

 

市場借り入れ

16,383

47.2%

アジア開発銀行

4,416

12.7%

中国

3,388

9.8%

日本

3,360

9.7%

世界銀行

3,231

9.3%

インド

859

2.5%

その他

3,038

8.8%

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[ 2022年8月22日 ]

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