アイコン スーダン内戦の整理 国軍・RSFの両将軍の問題点と各国との関係


スーダンでは4月15日、現軍事暫定政権の議長と副議長が対立し、内戦に突入している。
議長は国軍トップのブーハン将軍、副議長は政府ご用達の民兵組織・即応支援部隊=RSFトップのガダロ将軍。ブーハン議長はRSFに対して解体・国軍への編入を命令し、RSFが反発して軍事行動に出、内戦に発展している。
勢力は共に10万人あまりで兵器も、共にロシアから調達した重火器を持ち、戦闘は激しさを増している。
そうした中、各国は外国人の退避を目的に、両者に対し停戦を合意させ、外国人の救出作戦が展開されている。

<国軍ブーハン将軍/現軍事政権の議長/実質、大統領の問題点>
ブーハン将軍の問題点は、30年間続いたバシル独裁政権に対する2019年4月のクーデターで追放した要人たちを復職させていることにある。国民会議党(NC/命令で解党)の党や要人たちは公金横領の罪に問われ、銀行預金はすべて凍結されていたが、暫定民政政権に対する2021年10月の軍事クーデター後、多くのバシル政権時代の閣僚を復帰させ、銀行口座の凍結も解除した。さらに収監されていた閣僚らを無罪放免で開放させ、一部は復職させている。
ブーハン将軍自身もダルフールの大虐殺事件では陸軍参謀として関係していた。
 バシル大統領派(国民会議=NC)と手を結び、ブーハン軍事政権(現状でもある)→選挙によるブーハン親軍政権としてスーダンに君臨する動きのようだ。
(タイでは2014年軍事クーデター、その後の選挙で親軍政権に衣変えし、元、軍の司令官が9年余り君臨し続けている。今年5月選挙が行われる)

 

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<RSFのダガロ将軍/現軍事政権の副議長の問題点・UAEとの関係>
バシル政権下、2000年代に入り西部の非アラブ系住民が多いダルフールで、地域資源利益の配分を求めて反政府運動が発生、バシルが現地のアラブ系遊牧民たちの民兵組織「ジャンジャウィード」(指導者:ムーサー・ヒラール/司令官:ダガロ)を利用して大虐殺事件(2003年以降2007年までに7万人あまり)を起こした。
2013年に南スーダン独立後の領土問題による反政府運動に対して、バシル政権は「ジャンジャウィード」を核としたRSF軍(即応部隊)を創設させた。RSFはリビアやイエメンへ傭兵部隊として活動、組織を拡大し続けてきていた(イエメンへはUAEの要請だったとされ、派遣部隊は4万人にも達していた)。
2019年のバシル追放のクーデターの際、その後の軍政への抗議デモ隊に対して武力弾圧、120人あまりが亡くなったハルツーム虐殺事件もRSFが関与したと見られており、国民から恐れられている。 元々がダルフールを起源としているため地方出身ということでも、同じアラブ系ながら首都はじめ国民の人気はまったくなく、嫌われている。

ただ、RSFはこれまで敵対してきた反政府勢力を糾合する動きもしており、兵力が拡大する可能性も指摘されている。

ブーハン議長がバシル時代の閣僚らを引き入れ政治基盤を強化する中、ダガロ将軍もまた過去を謝罪しないまま、民主的な言動を繰り返し、対立軸をはっきりさせ、内戦の正当性と関係国の理解を得る戦略をとっている。
欧米の停戦要請でも、「停戦の用意がある」、外国人退避にしても、欧米の要請に応え、「首都の空港を安全にする」と国軍より先に発表している。

<ロシア・ワグネルとRSF>
ワグネルはバシル政権時代、軍事顧問としてスーダンに関与、その見返りに金の採掘権を受けていたとされ、これまでに大量の金がロシアへ輸送されている。
その金鉱脈はダルフールからスーダン中部まで幅広い高原地帯にあり、そこを軍事的に支配下にしているRSFと結びつき、RSFが採掘し、分け前を1/3分割(バシル・RSA・ワグネル)していたものと見られる。
バシル追放後はバシルの取り分がRSFのロシア製重兵器の調達費用になっていたと見られる。RSFの10万人以上の組織を養うには、それ相応の財源が必要となるが、今後の戦費としてそうした資金を蓄積していたものと見られる。ダガロ将軍はほかにもいろいろなビジネスも展開していたとの報道もある。原油資金を持つUAEとの関係もある。

<国軍とエジプトとの関係>
現在のスーダンはエジプトとの関係が深い、スーダンとエジプトは国境を開放しており、これまでにスーダン人500万人あまりがエジプトに出稼ぎに出ている。
こうしたスーダン内戦でエジプトに大量に流入することも予想されている。

エジプトが民政からクーデター以降長期軍政であるようにスーダン軍のエリートもそうあるべきだと思っているようだ。国軍のブルハン将軍とエジプトのシシ大統領との関係はより強固になってきていた。
また、エジプトはナイル川の河川が枯渇する恐れが高いエチオピアの巨大「ルネッサンスダム」建設をスーダン現政権と共に拒否、エチオピアをけん制してきた経緯もある。

スーダン紛争も、国軍とエジプト軍がスーダン北東部の陸軍基地で軍事演習を行っていた最中に勃発。そこをRSFが急襲し、エジプト軍177人が取り残され、その救出に当たり、エジプト政府はUAEに協力を求め、エジプト軍は軍用機4機を出し、エジプトに無事帰還させた。そのUAEはRSFを支援しており、それが可能となった。

<エジプトの弱点>
UAEはエジプトに関し、今回のエジプト軍の退避だけではなく、エジプトに対して資金支援し、エジプトの財政破綻を食い止めている。エジプトの3月のインフレ率は32.7%まで上昇し続けており、国民の不満も大きくなっている。食料に限ってはインフレ率が62.9%と露制裁によるロシア産小麦の入荷不足もあり高騰している(エジプトはロシア産小麦の最大の輸入国)。
貿易は貿易収支どころか経常収支も2014年から赤字が続き、最近はそれが拡大している。それでも内需が安定しているのか失業率は低下し続け7.2%、ただ、経済が悪化して失業率が上昇すれば、スーダンから避難民が押し寄せた場合、国民の不満から、エジプト政権は危機に瀕する可能性もある。

そうしたところに今回のスーダン内戦、エジプトが軍事介入すれば、UAEの支援もなくなる可能性もあり、IMFに救済を求めるしかなくなり、現在の軍事政権への批判は限りなく高まることになる。現時点では、エジプト政権はスーダンの両軍ともに支持しないとしている。
結果、エジプト自身が動ける状況にないのが実情のようだ。

<西側は>
欧米はスーダンの政治が落ち着けばよいという対応、どっちに転がり込んでもロシアと中国の影は付きまとい、その上でビジネス対応するというのが欧米スタイル。政治が不安定でもあるにもかかわらず、欧米から大量の民間人がスーダンに在留しているのもそれを裏付けているようだ。英国:4000人(元宗主国=元植民地)、カナダ:1500人、EU:1500人・・・

(独立前のスーダンはイギリスと一部フランスが植民地にし、イギリスがモロッコをフランスに提供し植民地交換、イギリスがエジプト共にスーダンを植民地にしていた経緯がある。但し、エジプトもスーダンもイギリス連邦=コモンウェルスの加盟国(56ヶ国/旧植民地が加盟)ではない)

<ロシア-UAE-スーダンRSF>
OPEC+のプラスはロシアだ。何で+が付いたのかは、2014年当時、原油価格が値下がりし、サウジはじめ中東諸国が米国に産出量を抑制するよう求めたが、米経済第一主義の米オバマ政権は応ぜず、ロシアに減産を要請、ロシアが応じたことから+になった。
こうしたことが今になって災いし、ウクライナ問題では中東のOPEC諸国は中立姿勢で米主導の露制裁に加担していない。

それどころか、UAEは安価に露産原油を購入し、国産原油と混合しUAE産として販売しているという。それを拡大したかったのかUAEは撤回したものの一時OPEC離脱を匂わせていた。

サウジの子分格のUAEも原油価格の値上がりと経済発展により独自色を強めている。中東産油国が金にモノを言わせてそれぞれ関与するのは、アラブ世界、イスラム教の世界であり、中東から北アフリカ全般におよぶ。中東産油国は決して1枚岩ではない。イランはイスラム教でも宗派が異なり別格、同じスンニ派でもカタールはUAEやサウジ、エジプトと仲が悪い。

ワグネルが軍事支援で取得したスーダン産の金もUAEを経由してロシアに送られているという報道もなされている。
RSFはUAEの要請により最大4万人をイエメンに派遣していた関係がある。

<戦闘>
国軍のブーハン議長は4月、ダガロ将軍に対しもRSFの国軍編入・解散を命じた。当然、ダガロ将軍らRSAは猛反発、4月15日の内戦へ発展した。

国連のスーダン食糧倉庫の4000トン全部が紛争直後に略奪されている(盗人は判明していない)。

国軍は基地を拠点としているが、RSF軍は住宅街に展開しており、そうした住宅街の拠点での銃撃戦だけではなく、国軍が爆撃していることから民間人の犠牲者も増えている。

双方とも兵力は10万人あまりで拮抗しており、戦闘機を持つ国軍が有利に展開しているとの見方もあるが、大統領府や空港は開戦直後にRSFが占拠し、いまだ維持している点からして国軍に対して対抗力はあり、相当準備をしていたものと見られる。ただ、RSFは同時に放送局へも進軍させたが国軍に拒まれ失敗している(現在はほとんど国歌しか放送されておらず、市民への情報が枯渇している)。

まだインターネットはつながっているようだが停電が多くなり、日曜日段階でネット接続可能地域は2%まで低下しているという。携帯電話も繋がりにくくなっているという。外に出れば銃撃戦がいつ始まるか分からない首都、多くの住民は自宅に軟禁状態となり、食料・飲料水、医薬品など不足に陥っているという。20万人あまりの妊婦の健康状態も懸念されている。
国軍による首都の都心部に展開するRSF軍に対する爆撃により、水道インフラが各地で破壊され、水道は機能停止、首都の市民はナイル川で取水しているという。

こうしたRSFに対して国軍は痺れを切らし停戦合意中にも大統領府周辺ゆ空港周辺で銃撃戦や爆撃を行っている。

多くの地方都市も戦火となっているが、記者が入れないのか状況はほとんど報道されていない。

ブーハン国軍は15機あまりのロシア製戦闘機と別途露製ヘリを有している。(RSFは首都北東のエジプト軍を包囲した基地空港でミグ戦闘機1機を捕獲し持ち去っている。) 
停戦合意時間(24日午後1時まで)を過ぎている。

<仲介>
NATO加盟国でアラブの盟主となっているトルコのエルドァン大統領は両将軍に電話をかけ、トルコで直接交渉するように呼びかけた。
しかし、国軍ブーハン氏は拒否、RSFのダガロ氏はブーハン氏との交渉は拒否、国軍のほかのメンバーだったら交渉に出席すると回答したそうだ。

米国など西側諸国も停戦を合意させ、その後も停戦するように呼びかけているが、あくまで外国人たちの退避を目的としての合意、それもすでに失効しており、再び戦闘が激化する可能性がある。
そうした中、米ブリントン国務長官が両者に対し継続して連絡を取り合い、停戦合意の継続で合意したという報道もなされている(BBC)。

ただ、国軍に影響力を持つエジプト、RSFに影響力を持つUAEが、一緒に前面に出てこない限り、長期停戦の実現は厳しいとの見方もなされている。

ロシアや中国もスーダンに対して大きな影響力は持つが、ロシアは余裕なく、中国は後出しジャンケンしかしない国。

(AFP、BBC、ロイター、アルジャジーラ、スーダントリビューン紙等より記事構成)
戦争は負傷者や死人を出し家族を悲しませるだけ。
ブルハン将軍とダガロ将軍、それにバイデン様、プーチン様、習様らを宦官化するのが地球人類の幸せかもしれない。

[ 2023年4月25日 ]

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