アイコン 韓国製の「メンブレン型」LNG船 2隻運航開始か 仏GTT社と特許対決へ


韓国はLNG船の建造で、丸型から積載量も多くなる現在主流の「メンブレン型」のLNG船倉の特許を有するフランスのGTT社から技術を導入して建造しているが、1隻当たり約100億ウォン(約10.5億円)を支払っている。

こうした特許料を支払い続けており、2004年に国富流出として独自に政府主導により韓国ガス公社と造船会社のサムスン重工業がタイアップして国産化した。2018年4月に独自技術で「KC-1」を完成させ2隻(SK海運所属のSKセレニティ号、SKスピカ号/サムスン重工業製造)に搭載して、北極海航路を試験運航、しかし同年4月に早速、船舶外壁に結氷問題が生じ、利用不可となった。

LNG船は液化天然ガス(LNG)を保管するタンクを積む船舶だが、天然ガスをマイナス160度という超低温で液化した状態で保管できる技術を保有する企業は仏GTT社しかない。
更に仏GTT社は自社特許に抵触するとして韓国政府主導で開発した「KC-1 」を問題視している。

 

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韓国の造船会社はLNG船については世界最大の受注残数を有しているが、完成するたびに特許料10.5億円、GTT社に支払い続けている。

2020年11月、韓国の公取委が「メンブレン型」液化天然ガス(LNG)貨物倉の独占技術を保有するフランスのGTT社に対して課徴金を課し制裁した。
韓国公取委は、「GTTがLNG船舶を建造する国内造船会社を相手にLNG貨物倉技術ライセンスを提供しながら、エンジニアリングサービスまで購入するよう強制した行為に対し、是正命令と課徴金125億2800万ウォン(約12.5億円)を賦課する」と決定した。
しかし、エンジニアサービスをGTT社から受けず、問題が生じた場合、GTT社の「メンブレン型」特許の安全性と信頼性の問題が生じ、切り離すことは困難と見られる。GTT社は韓国公取委の制裁に対して控訴している。

結局、2023年5月には(結氷問題を抱えた)KC-1の設計を基礎とした第2世代の「KC-2」が採用されたLNGタンカーも運航(2隻製造していたLNG船の一隻をKC-1の改良型KC-2に改修)を開始したが、利用する商船会社はなく、係留されたままとなっている。

そこで韓国政府当局は、結氷問題が生じる北極海航路を避け、中近東-韓国間の路線だけに投入すれば問題ないとし、運用を開始する動きとなっている。
韓国政府は力で利用させるのか、商船会社は世界で動いており信用問題もあり、特許侵害の疑いのある船舶を無闇には利用しない。しかし、韓国ガス公社用に限定すれば運航も可能だろう。

しかし、KC-1の特許抵触問題がクリアーされない限り、(結氷問題を解決したとしても)「KC-2」はその延長線上にあり、GTTから特許侵害問題を追求されることになる。GTTが勝訴した場合、無断使用の制裁的損害金賠償と特許使用料の2つの賠償が請求される可能性すらある。
欧米の特許権は特に包括的特許も有しており、何でもかんでも特許登録していることでも知られる。

[ 2023年6月 6日 ]

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