アイコン 造船業 中国が韓国を上回り世界一に 総合力評価


今年2月の全世界の造船受注残量は(英クラークソンリサーチ)、
総計で1億2,588万CGT(4,598隻)。
1位の中国は6,223万CGT(2,532隻)、
2位の韓国は3,861万CGT(721隻)、
3位の日本は1,259CGT(633隻)となっている。

中国の造船業全体の競争力が初めて韓国を上回ったという分析結果が出ている。
韓国の造船業界は最近、液化天然ガス(LNG)運搬船などを相次いで受注し、好調を示しているが、中国の競争力を無視してはならないという警告音が鳴っている。総受注量や特定船舶の受注量だけで競争力を計るのは判断ミスにつながりやすいという意味でもある。

 

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 韓国産業研究院は13日に発表した報告書「中国に後れを取った造船業バリューチェーンの総合競争力と新たな韓国型海洋戦略の方向」で、「韓国が維持していた造船産業バリューチェーンの総合競争力1位を、昨年中国に明け渡した」と述べた。
造船業バリューチェーンの競争力は、
▽研究開発(R&D)・設計
▽調達
▽生産
▽メンテナンス(AM)・サービス
▽需要
の5分野を評価し、総合点数を算出する方式で推定している。

韓国の昨年の総合点数は88.9で、中国の906に次いで2位。3位は日本で83.1、欧州連合(EU)が71.4と続いた。

韓国研究院は造船業バリューチェーンの総合競争力に対する評価を2020年から行っている。これまで1位は4年連続で韓国だった。
 分野別に見ると、韓国は研究開発・設計と調達においてのみ競争力で優位を示した。生産とメンテナンス・サービス、需要の側面では中国の競争力の方がはるかに高かった。

船種別では、
韓国はLNGガス運搬船とコンテナ船だけで中国を上回った。
タンカーでは、中国が2022年から競争力において韓国をリードしている。
 韓国研究院は「中国の海軍現代化の努力は1990年代初中盤から30年間続き、東アジアで最大規模の海軍を保有している。2015~2020年には軍艦の数で米国も追い越した」と指摘した。
中国の造船業が価格競争力を備え質的成長を遂げた背景には、中国が国営造船所を支援・育成した戦略がある。

 今年3月基準の受注残量順位を見ると、単一造船所基準では韓国の4社(サムスン重工業、HD現代重工業、ハンファオーシャン、HD現代三湖重工業)が1~4位を占めているが、造船所グループ基準では中国国営造船グループの中国船舶工業集団(CSSC)が1位を占めている。
 韓国研究院は造船業を基盤に海運、船舶金融、国防を含む「韓国型海洋戦略」の樹立を提案している。個別産業戦略でアプローチした場合、造船所は商船部門を縮小したり、船舶金融が大企業に集中する副作用などが発生する可能性がある。

韓国研究院は「バリューチェーンにおける個別部門の最適化だけでは造船産業の競争力強化に限界がある。造船業だけを考える消極的戦略から抜け出し、大局観に基づく新たな海洋戦略が必要だ」とし、「我が国の友好国との商船と特殊船の協力を同時に引き出す戦略も良い」と指摘した。

 これに先立ち、韓国輸出入銀行の海外経済研究所も海運造船業の第1四半期動向報告書で、「今年第1四半期の受注好調は、カタールの第2次LNG船舶の発注量が同時期に集中した特異な状況によるもの」だとし、「受注船種が一部の船種に集中している点や、人材難により生産システムの安定化が困難な点など、克服すべき問題に対する改善の取り組みが求められる」という分析を示した。
以上、 

中国は韓国が手を出せない露からタンカーやLNG船を大量受注している。露制裁で世界40数ヶ国(西側)は露産商品取引を停止しているが、ほかの150ヶ国あまりは資源高や為替安でエネルギー資源を高価格で購入しなければならず、中東産などから2割前後安価に販売されている露産が中国・インド・東南アジアや新興国が購入し、露産エネ資源の運搬船は不足している。
西側の船舶保険会社が露産運搬には保険を付与しないため、世界の大手商船会社は中国を除き、露産原油やLNGの運搬に従事していない。中国は原油・天然ガス(=LNG)を政府系がイラン・中東などから、民間は露から大量輸入している。インドは新たに露産原油を大量輸入、インド国内で軽油・ガソリンなどに精製し、大量に欧州へ輸出している。

<外国人労働者が牽引する韓国の造船業界>
今や韓国の造船業界は、最低賃金の大幅上昇(2018+19年=29.2%上昇)に報酬も上昇し、ベトナムの溶接工を採用できなければ完成させることができない人材不足が続き、東南アジアやネパールなどからも大量採用している。造船業における昨年1~9月までの外国人労働者の採用は1万4359人で同期間中の全採用の83%達していたという。
すでに実質賃金では韓国の方が日本より高く、外国人労働者の賃金も韓国の方が各種手当ても付き日本より高い。

韓国は造船の受注拡大が続いているが、安値受注、資源高・鋼材高で赤字決算が続き、昨年期は何とか黒字に持ち込んでいる。

韓国造船会社の昨年下半期の1隻当たりの受注単価は、
●17万4000立方メートル以上の大型液化天然ガス(LNG)運搬船が2億6500万ドル(約400億円)、
●超大型原油タンカー(VLCC)が1億2800万ドル、
●超大型コンテナ船が2億3300万ドル。

韓国の造船会社は、LNG船は仏企業特許の箱型輸送船を主としており、1隻あたり260億円前後、20億円あまりの特許料を支払っている。

中国は大型クルーズ船を建造し能力を有しているが、韓国のリスクが大きいことから韓国の造船業界は受注を避け、まだ、造ったことはない。軍艦は中間とも建造し輸出もしているが、中国は3隻目の空母「福建」を建造、試験航行中で空母の建造の力有している。韓国にはない。

イエメン・フーシ派によるスエズ事態により、大型コンテナ船やタンカーはリスクを避けるため、迂回ルートの喜望峰経由(南アフリカ南端)でインド洋から欧州へ向かっており、航程が長距離、運送中の船舶の増加から、船舶不足が生じ、大型船の船賃は上昇している。

2024年2月、韓国が世界一位に返り咲き
今年2月、韓国造船が1年ぶりに「世界1位」の座に復帰した。
高付加価値船種中心の選別受注戦略が中国物量攻勢を圧倒し、全世界発注量の50%を占めた。
英クラークソンリサーチによると、2月の全世界の船舶発注量は241万CGT(標準船換算トン数·100隻分)で、前年同月比18%増加。
1隻当たりのCGT換算トン数は、韓国が6.1万CGT、中国が2.4万CGTで、韓国が中国より2.5倍高かった。
CGTは船舶の付加価値、作業難易度などを考慮して算出した単位。

月間受注量で韓国が中国を上回ったのは、昨年3月以降12ヶ月ぶり。
韓国造船のビック3であるHD現代重工業とサムスン重工業、ハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)などは、3年分の仕事を安定的に確保しながら、無理な受注の代わりに収益性の高い船舶を中心に選別受注を進めるという計画を明らかにしている。 量より質に集中した方針に変更している。
韓国造船主力船種であるLNG運搬船、LNG燃料推進船など高付加価値·親環境船舶であるほど価格が大きい。
韓国の造船業界では、今では、これを市場占有率評価基準としている。 中国が2倍も多くの物量を受注しても、いざ占有率ではむしろ遅れを取っている理由となっている。
LNG運搬船の需要が当分続くものと見られる。 巨大な欧州の原油と天然ガス市場が、露産から米国やカタールなど中近東産にシフト換えが急速に進んでおり、天然ガスを液化して運搬するLNG船ニーズが急速に高まっている。韓国はカタール政府から大量のLNG船を長期に受注している。

日本の3大商船会社、今では国策企業でもあるが、そうした日本の商船会社が韓国の造船会社に大量に発注している。日本の造船業を育てることなど毛頭ない。

日本の造船会社は、旧財閥系は商船から完全撤退、予算が豊富な自衛艦や潜水艦など軍艦のほか、巡視船など官船製造に専念。民間船主力は今治、ジャパンマリン(JFE+IHI+今治)、川崎重工、常石・・・。
日本の造船会社に、商船と造船間の財閥の紐付けがなくなり、価格競争力がないのか、それとも製造能力がないのか。かつて世界一の造船大国日本、限りなく沈没しにいっている。

[ 2024年5月21日 ]

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