【現地生産でも競争力なし】広汽FCA破産が示す、中国EV市場の現実と外資企業の限界
2025年7月、中国の国有大手・広州汽車と欧州ステランティスの合弁企業「広汽FCA(広汽菲亜特克莱斯勒汽車有限公司)」の破産が正式に認められた。負債総額は81億元(約1620億円)超。合弁事業として2010年に誕生し、一時は20万台以上の販売台数を誇ったジープブランドの国内生産モデルが、なぜ競争力を失い、資産売却すら成立しない「不良化工場」と化したのか。
破産申請から2年、競売5回すべて不成立の衝撃
広汽FCAは2022年10月に破産を申請して以降、長沙市の生産拠点や設備を5度にわたり競売にかけてきたが、すべて不成立に終わった。これは、中国の自動車市場で供給過剰と設備過多が深刻化している現実を示す象徴的な事例だ。
同様に、VWと上海汽車の合弁工場も閉鎖が決定されており、中国市場での「工場閉鎖ドミノ」は既に始まりつつある。
外資×国有の合弁モデル、もはや時代遅れ
破綻の直接的なきっかけとなったのは、ステランティス側が出資比率を50%から75%へ引き上げる方針を発表した2022年。これに広州汽車が難色を示し、増資に応じなかったことから、合弁解消と破産へと一気に傾いた。
こうした合弁スキームは、かつては中国進出の常道だったが、EVシフトや戦略転換の速さが問われる現代においては、出資比率や経営主導権をめぐる対立がリスクに転化するケースが増えている。
信頼を失ったジープブランド、品質と価格が裏目に
かつて中国で人気を博したジープ車だが、2018年以降、品質問題が相次いだ。走行中のエンストなどが報道され、消費者の信頼は急落。2021年には販売台数が2万台まで落ち込んだ。
さらに、ジープ車はガソリンSUVという市場トレンドに逆行した製品であり、価格も高水準。ラングラーなどは800万円超と、中国市場では競争力を失った。EV主流の市場に、時代遅れの高級ガソリン車を投入していた結果ともいえる。
EVバブルの裏側に「工場の墓場」
近年の中国EV市場は、BYDやNIOなど新興勢が急成長し、政府の政策支援も集中。旧来型OEMや合弁企業は、競争力を維持できないまま市場から退場を余儀なくされている。
米アリックスパートナーズによると、現在のEVブランド約130社のうち、2030年まで生き残れるのはわずか15社にすぎないという。過剰投資と値下げ競争が生む「EV墓場」は、今後さらに拡大すると見られている。
外資に求められる“現地化の再定義”
今回の広汽FCA破綻が投げかける最大の課題は、「外資メーカーの中国戦略の限界」だ。
ブランド力、合弁パートナー、過去の実績。これらに依存する戦略ではもはや通用しない。スマホとの連携、UI/UXの完成度、OTA対応など、ソフトウェア主導の製品づくりが求められている。
さらに、中国起点の輸出モデル構築や、都市交通・保険・エネルギーなどのサービスとの連携も前提とした“多層的なモビリティ戦略”が不可欠となっている。
日本企業にとっての“他山の石”
この破綻は日本メーカーにも重く響く。市場トレンドに乗り遅れれば、現地生産であっても「売れない・売却できない」資産に転落するリスクがある。
変化を見極め、柔軟に戦略を転換する経営体制と、現地の声をダイレクトに商品開発に取り込む体制構築が急務だ。
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広汽FCAの破産は、単なる合弁解消や販売不振による経営破綻ではない。これは、中国のモビリティ市場の変質に外資が対応できなかったことの“結果”であり、“警告”である。
いま、中国のEV市場は、車そのものよりも体験・接続性・サービスとの統合性が価値を持つ時代へと突入している。
その現実を直視できるか否かが、グローバル企業の未来を大きく左右するだろう。





