アイコン 米中貿易戦争 通称協議は実質進展せず 知的財産権・強制技術移転・略奪

 

 

中国北京で開かれていた米中次官レベル通商協議は9日終了した。
中国による農産物やエネルギーの輸入拡大、市場開放で進展があったと報じられている。
一方、中国当局による国内ハイテク企業への補助金や米企業への強制技術移転では、双方の溝が依然と埋まらなかった。
米トランプ政権は、また、対中通商合意に中国の公約履行を含めるよう強く求めている。
協議中の8日、中国農業農村部は米の遺伝子組み換え(GM)農産物の輸入を約1年半ぶりに承認し、譲歩を見せた。

しかし、中国当局は、米企業に対する技術移転の強制をしていないと主張する。また、国家安全保障上、また政治的要因から、中国は米が提起した一部の問題について協議を拒否しているという。
今後の米中通商協議では、
知的財産権侵害・強制技術移転、
市場開放・市場アクセス、
中国当局の製造業振興政策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」が依然として大きな争点であるとみられる。

米WSJ紙は、米中が今後、貿易摩擦解決に向けて「障害走」を続けていくとの見方を示した。

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1、知財権侵害と強制技術移転
WSJは昨年9月の報道で、中国当局による外資企業への強制技術移転の手法を紹介した。例えば、中国当局は進出する米企業に技術を手放させるよう圧力をかけたり、裁判所を利用して米企業の特許を無効にしている。
さらに、商業情報を入手するために、独占禁止局の職員を捜査の名目で米企業に送り込み、入手した情報をライバルの中国企業に渡すなどの手口を取っている。

米国は、昨年3月、欧州連合(EU)は6月と12月にそれぞれ、中国当局の技術移転の強要は、世界貿易機関(WTO)の『知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)』に違反したとして、WTOに対して提訴している。

ロイター通信は昨年5月28日、中国の張向晨・WTO大使は、外国企業に対する強制技術移転を完全に否定したと報じている。
しかし、昨年トランプ米政権の対中関税制裁の強化につれ、中国当局は米の圧力で歩み寄る姿勢を示した。

中国当局は昨年12月26日、「外商投資法」の草案を公布した。草案は「行政手段を利用し、強制的に技術移転をさせてはならない」と明記した。
しかし、「中国企業による買収・投資を、悪意をもって拒否する国に対して対抗措置を取る」と互恵関係に重点を置くものとなっている。

米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の中国問題専門家のスコット・ケネディ氏は12月28日、草案の最大の抜け穴は、「企業買収を手がける外国企業が中国企業と平等に扱われると触れなかったことだ」と強調した。

中国の商務関連法律に詳しい米ハリス・ブルッケン法律事務所のパートナー弁護士のダン・ハリス氏はロイター通信(12月27日付)に対して、中国の強制技術移転に関する規定が「机上の空論」だと一蹴した。
同法律事務所のスティーブ・デッキンソン弁護士は、「外商投資法」には、外資企業の中国ネット市場への参入に関する内容が盛り込まれていないと指摘している。

2、市場参入
中国当局は昨年12月25日、外国企業による市場参入の規制分野の概要を示す「市場参入ネガティブ・リスト(2018年版)」を発表した。
以前の試行版リストと比べて、約177セクターへの参入制限がなくなった。
リストに掲載された151セクターのうち、投資が禁止されるのは4セクター。残りは政府の承認が必要になる。
投資が禁止されるのは「不正融資」や「不正インターネット活動」など。
政府の承認が必要になるのは鉱業、農業、製造業などの分野。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国国内の専門家はこのリストは「象徴的な意味しかない」とした。
一部の重要産業において、中国の民間企業または外資企業が現在も「排除されている」。

英BBC放送は、中国当局が100%外国資本の会社設立と外資企業の単独事業運営を認めなければ、真の市場開放とは言えないとの見解を示した。

3、「中国製造2025」
中国当局が主導する「中国製造2025」は、米中双方の間にある最大の争点となっている。中国当局による国有企業への補助金交付、強制技術移転、技術窃盗、市場参入の規制などはすべて「中国製造2025」を成功させるためにある。

中国当局や政府系メディアは昨年12月以降、トランプ政権を刺激しないよう、「中国製造2025」について触れないようにしてきた。ただ、同政策の中止については明言せず、進展速度を緩めるとしている。

WSJは12月12日、中国指導部は「中国製造2025」の代わりに、新産業政策を策定している。
この新政策を通じて、当局が主導権を握っている印象を薄める意図があるという。

ロス米商務長官は昨年12月米メディアに対して、中国当局は「中国製造2025」への言及を控えているが、「放棄したわけではない」と述べた。
ロス長官は、中国当局が本気で通商摩擦を解決したいなら、「中国製造2025」を真っ先に取り消すべきだと発言した。

4、中国、約束は守られるか
1月9日に第5回目となる米中通商協議を終えた米政府にとって、中国当局にこれまで承諾した合意をいかに守らせ、構造改革を行わせるのかが今後最大の課題となる。
米通商代表部(USTR)が9日に発表した声明では、中国側が約束した事項について、「継続的な検証を受ける完全な履行と効果的な実施」をする必要があると強調した。

中国対外経済貿易大学の中国世界貿易組織研究所の屠新泉・所長はサウスチャイナ・モーニング・ポストに対して、米中双方が最終的な合意を達成するまでの道のりがまだ長いと指摘した。
7日から9日までの交渉は、合意達成に向けた詳細事項について議論しただけで、今後、米中首脳が「難しい政治的な判断を強いられるだろう」という。

米CNBCによると、シンガポールにあるDBS銀行のタイムール・バイグ・チーフエコノミストは、貿易戦争における対立は輸出入分野の枠を超えており、3~6ヶ月以内に終了することはないとした。

英BBCも10日、北京大学で教鞭をとっていたクリストファー・ボールディング氏の話として「米国は、中国が経済の構造改革を実施し、他国と同じような正常な国になるよう望んでいる」と報じた。「しかし、中国はそれを望んでいない」と同氏は付け加えた。
以上、

昨年9月米トランプ政権が中国に対して行った2000億ドル、10%の追加関税制裁、1月から制裁関税を10%から25%に引き上げるとしていたものの、11月初めのG20における米中首脳会談で、1月実施を90日間先送りするとした。

中国では、3月にも全人代が開催され、習近平主席もこれ以上の経済悪化は大会で批判される可能性もあり、収拾を付けたいのが本音だろう。しかし、基本事項を保持したまま、見せ掛けの対外的な改革では、米国との協議は前に進まない。

米国が、4月から25%に引き上げると、次に残るのは中国からの残る輸入量2650億ドル超が、追加制裁されることになる。

北朝鮮の核問題も、北朝鮮が韓国や中国まで引き入れ米国との駆け引きに終始し、米国はすでに疲れ気味になっている。
中国が北朝鮮核を利用して、米国に貿易面で譲歩させる可能性もある。
すでに中国の製造業は低迷しており、米トランプ政権にしても、好調な米経済が下降局面に至れば、中国への強硬な姿勢も修正を余儀なくされることになる。
以上、

米トランプ氏はメキシコ壁にご執心であるが、3月には財政の壁が立ちはだかっている。大統領として緊急事態を発動して壁を建設することも取りざたされており、さらに下院民主党との対立が激化することになる。
米国では、大統領の独裁をけん制するために中間選挙が用意されたという。しかし、トランプは大統領改選にすべてを利用する動きに徹し、共和党をトランプ党に変貌することに成功させ、自らの赴くままの政策を講じている。ただ、対中政策では、すべてに日和見主義だったオバマとはまったく異なり、大国となりしたい放題の中国に対して、それ以上の大国として全うな政治を貫いている。

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[ 2019年1月15日 ]

 

 

 

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