アイコン 光州型雇用創出 自動車生産受託工場の考案者の背景と本音 VW真似る

 

 

かつて韓国光州市で起亜自動車労働組合のトップだったパク・ビュンキュ氏(53)は、急速な工業化時代に経済を牛耳っていた同族支配の強大な「チェボル(財閥)」を相手に、労働者の保護を求めて戦った。

だが、約20年前、別企業の非正規労働者の権利を求める運動に参加したパク氏は、その後、鉄パイプを振るう正規組合労働者たちに襲撃され、右半身不随となった。
この襲撃を機に同氏は、韓国労組による強硬で、大半が好戦的な手法に愛想を尽かした。こうした手法に対しては、自分たちの権利を守るために他の労働者を犠牲にしているという批判が高まっている。

パク氏はいま、光州市が計画する現代自動車との合弁事業のために働いている。
低賃金(現代自動車の従業員平均9200万ウォン/光州自動車は3500ウォン)の自動車工場を新たに建てるプロジェクトで、現代自が国内に新工場(正式には光州市などが出資する自動車生産受託工場)を建設するのは25年ぶり。
総工費6億1600万ドル(約690億円)の工場は1000人の雇用を生み出すが、現代自の組合労働者に比べれば賃金は半分以下で、彼らが現在享受している福利厚生の多くも利用できない。
「既得権を持つ労組は変わらなければならない。そうでなければ、彼らの利益も奪われるだろう」とパク氏は言う。
「組合労働者は現実を直視するべきだ」

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合計生産台数で世界第5位となる現代自及びその系列の起亜自の労組は、新工場建設に反対してストライキや抗議集会を行ってきた(まだ本格闘争に入っていない)。
労組の主張は、新工場によって「質の低い雇用」が生まれ、既存の工場から生産と雇用が奪われるというもの。

だが、製造業の雇用が切れ目なく低賃金国へと流出していった経験を持つ光州市では、多くの失業者が、新工場で働きたいと即答している。
中国経済の減速、米国の保護主義、最低賃金の上昇といった状況下、アジア第4位の経済である韓国は雇用創出に苦しんでおり、文在寅政権にとって雇用は重要な関心事となっている。
文政権は、光州市の新工場に対して財政的な支援を行う予定であり、6月までに他の2つの都市でも同様の官民プロジェクトを導入する計画(光州型雇用創出策)。
当局者は、こうしたプロジェクトによって、それでなければ海外に工場を建設するであろう韓国企業が国内回帰することを期待している。
政府の出資を受ける韓国労働研究所の上級研究員パク・ミュンジョン氏は、「これは労使関係の問題を解決しようという、大胆な実験だ」と話す。
同氏は、光州市のプロジェクトが2014年にスタートしたときから関与している。
官民共同のプロジェクトとして自動車製造工場が建設されるのは韓国では初めてであり、伝統的な労組に加入している自動車労働者にとっては、これまでで最大の脅威に直面する。

(文在寅政権の政策 : 最低賃金を2年間で29%も上昇させ、労働時間も60時間から52時間に短縮させたことが、中小企業を直撃し、雇用問題を引き起こしている)

パク氏によれば、若年層の失業率が過去最高に迫り、経済が低迷する中であっても、こうした労働者は大半が高い賃金・諸手当を維持しているという。
「高コストの労組系雇用は徐々に消滅していくだろう」

<貧困都市>
現代自の新工場では、年間3500万ウォン(約345万円)の給与が支払われる計画。これは現代自の現職労働者が稼いでいる9200万ウォンの3分の1強にすぎないが、光州市のサラリーマンの平均3300万ウォンを上回っている。

光州市は、起亜の国内最大の生産拠点を抱え、南東部の蔚山に次ぐ国内第2位の自動車生産都市として、製造業生産高の40%以上を自動車セクターによって生み出している。

現代自による生産拠点の海外移転に伴い衰退してきた蔚山(世界最大の工場、年生産キャパ160万台)と同様に、起亜の生産台数が昨年、過去8年で最低水準に落ち込んだことにより、光州市の先行きも暗くなってきている。

(現代・起亜は、海外に生産工場・・・2016年以降メキシコ・中国2ヶ所、今年インド工場完成、米国工場拡充・・・を造っており、世界販売台数が伸びない中、工場ばかり作っても生産する車両もなく、また韓国から輸出する車両も当然減少している)

現在、韓国大都市圏の中で光州市は2番目に貧しい都市となっており、韓国労働省のデータによれば、2017年の光州市における平均月給は全国平均よりも▲約13%低かった。

大学で経営管理を学んだキム・ジェスンさん(32)は、予定されている新工場でのブルーカラー職に応募するつもりだと話す。
「新工場の給与は、それでも平均的な労働者の賃金より高い。その意味では悪い仕事ではない。いい仕事だ」。
先日、市役所で開始された就職フェアの会場で、キムさんはこう話した。
光州市でロイターが取材した他の求職者も、同市における若年労働者の失業率が高いことを考えれば、新工場での仕事はやはり気になるという。

法律を専攻したゴー・チャンフンさん(27)は、「市内には質の高い雇用があまり多くない。最近の不景気を考えれば、3500万ウォンの給料がもらえるなら御の字だ」と話す。

<ドイツの前例はすでに閉鎖>
元労組リーダーのパク氏は、2014年に低賃金工場を最初に提案。その後は起亜を休職して市役所でフルタイムの仕事に就いている。
パク氏によれば、このアイデアは、現在では閉鎖されている独自動車大手フォルクスワーゲンの低コスト部門「オート5000」から借用したものだという。
これは、ドイツからの雇用流出を防ごうと2001年に設立されたものだった。フォルクスワーゲンが自社の強力かつ高賃金の組合労働者から賃金面での妥協を勝ち取ったことにより、同プロジェクトは2009年に終了した。

光州市の新工場では、2021年以降、(新型の)ガソリンエンジン搭載の小型スポーツ多目的車(SUV)を年間10万台生産する予定となっている。
光州市では、将来的には、この工場で電気自動車(EV)を生産したいと希望しているが、現代自の賛同はまだ得られていない。

ソウルの西江大のジェームス・P・ルーニー教授(国際財政論)は、新工場が成功を収めるにはEVを製造すべきだと述べている。
「この合弁事業を、労組や高い人件費から逃れるための場所として考えるべきではない。過去の製品ではなく、未来の製品に基礎を置くべきだ」としている。

現代自は、このプロジェクトへの参加を決断した理由として、光州市と現地のコミュニティ、事業担当者が「建設的な労使関係を築き、適切な賃金水準を維持する」と約束したからだと話している。
(実際は、文政権に睨まれたくないためで、文政権お墨付きで労働コストが下がれば言うことなし。 3500万ウォンの年間報酬のほか、5年間団体交渉権もない)

「こうした条件ならば、新たに設立される企業に小型自動車の生産を委託しても競争力を確保できると考えた」と現代自はロイターに宛てた声明で述べた。

光州市の起亜向けサプライヤーである現代ハイテックのキム・ヨング最高経営責任者(CEO)は、現代自の新工場が、起亜の減産分を補ってくれることを期待している。
起亜の光州工場は、昨年45万5252台を生産したが、これは62万台という同工場の生産能力をはるかに下回る。
「現在の人件費では起亜が自動車を作るのは難しい」とキム氏は言う。
光州市との合弁事業により、賃金の抑制に加えて、毎年の賃金交渉の際にほぼ毎回ストを打つという労組の慣習との決別が実現する。

(左派の文政権+左派の中核都市光州市と左派の現代・起亜労組が真っ向から正面衝突する)
韓国は戦闘的な労組と硬直した労働慣行で有名であり、これらは人件費の高騰と、韓国企業に対する慢性的な評価引き下げの原因として以前から指摘されてきた。

(文政権になり、ゼネストをした過激な民主労総の組合員が大幅に増加している。韓国労総も増加しているが・・・)

光州の新工場では低賃金に対する埋め合わせとして、中央政府の支援を得て光州市が、1100戸の従業員住宅の建設と、工場敷地内のデイケア施設、スポーツ関連施設の整備を予定している。

<無用の長物か>
この計画に対しては批判もある。
国内需要が伸び悩み、米国への輸出は減少、中国向けの販売も不調となる中で、自動車メーカーが過剰生産能力の解消に取り組んでいるのに、新工場を建設するのは得策なのか、という疑問。
自動車メーカーの労組によれば、韓国における今年の自動車生産台数は365万台まで減少すると予想されている。
これは合計生産能力466万台の4分の3に過ぎない。

労組側は、合弁プロジェクトは政治的な動機によるものだと主張する。光州は以前から、リベラル派の文政権の地盤。
大統領府の鄭泰浩雇用首席秘書官は、最近の記者会見で、「低成長・低雇用が構造的な問題となる中で、われわれはどうすれば雇用を創出できるか頭を悩ませてきた」と説明し、「このプロジェクトは、苦悩する国内経済を再活性化させる鍵になるだろう」と述べた。

地元当局者は、この計画は韓国製造業が直面するすべての課題に対する特効薬になるものではないと認めつつも、1歩前進になることを示せるだろうという。
「これは単に光州での雇用創出に留まる話ではない。低成長・低雇用・高コストという韓国企業社会の構造的問題への対応策なのだ」

光州市のイ・ヨンソプ市長はロイターにこう語り、「韓国の企業社会は、ブレイクスルーを必要としている」と強調した。
以上、ロイター参照 (( )括弧内はJC-NET記者が追加記載)

2021年までに工場完成、2022年までに生産開始
来年から生産が始まる22年にかけ、左派の政権と左派の労働組合が、あの光州事件が起きた光州市で激突する。
現代・起亜を仕切る組合は過激な民主労総、昨年9月組合の主導権を握った民主労総は、ルノーサムスンでは、翌10月から会社の経営状況など考えない主張のみ繰り返し、時限ストを繰り返している(ルノーサムスンでは2018年10月~2019年4月16日までに、断続的に58回時限ストを打っている。こうした影響もあり、生産量も落ち、韓国内での販売も大きく落ち込んでいる)。

日本はILOの多くを批准していないが、韓国はさらに団体交渉権さえも批准していないようだ。
VWのドイツと韓国との大きな違いは、軍人政権から文民政権に移行したのは1993年(平成5年)2月の金泳三政権からで、民主主義の民度そのものがまったく異なる。
当記事をロイターが掲載しているところにいみがある。

現代・起亜グループの世界販売台数推移
現代自動車の韓国内・世界販売台数
/千台
2015
2016
2017
2018
国内
714
658
688
721
海外
4,250
4,201
3,817
3,865
合計
4,964
4,860
4,506
4,586
起亜自動車の韓国内・世界販売台数
国内
527
535
521
531
海外
2,523
2,485
2,224
2,280
合計
3,050
3,020
2,745
2,811
現代+起亜自動車の韓国内・世界販売台数
国内
1,241
1,193
1,209
1,252
海外
6,773
6,686
6,041
6,145
合計
8,014
7,880
7,251
7,397
・中国のTHAAD不買は2017年3月から

 
[ 2019年4月22日 ]

 

 

 

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