韓国の半導体企業の業況
韓国の半導体産業が冬を迎えている。異常気象どおり、昨年第④四半期をピークに今年7月から3ヶ月連続して半導体の生産量は減少している。7月から3ヶ月連続して前月比で落ち込んでいる。サムスン電子は減産を表明しておらず、SKが大幅な減産に入っているものと見られる。半導体メーカーはほとんどが在庫増により減産に入っている。
世界経済の動向は三大経済圏の欧州・米国・中国で見て取れる。
1、 過度な新コロナ経済対策によるバイデンインフレと露ウクライナ侵攻=露プーチン制裁による物価高騰、米国のインフレ退治に伴う金利高に世界的な為替安を招き、各国の物価高の沈静化が遅れ、日本以外ほとんどの国がインフレ退治の金利高に誘導、経済の悪化を招いている。
米金利高は米経済を悪化させ、露制裁では欧州への経済的な影響が大きくなっている。
経済見通し悪化で、スマホは売れず、半導体の塊であるビッグデータセンター等の新設投資が大幅に減少している。
ただ、来年5月ころにはインフレ率は落ち着くが、指数は高止まりし、給与が上がらぬ日本はデフレより深刻なスタフグレーションの洗礼を浴びることになる。
韓国もインフレ、貿易赤字、冬場を迎えた半導体市場、最大の交易国である中国経済の低迷
など悪材料が続いている。
2、 中国経済が
(1)新コロナロックダウン策継続、
(2)国家主導の共同I富裕論によるITネット企業に対する管理強化により、投資や新機軸のソフト開発が大幅減退。
(3)国家主導による不動産バブル崩壊、今になって慌てても覆水盆に返らず。
(4)I米中貿易戦争による「中国製造2025」の核心のITC機器の開発遅れ。
などにより経済は低迷している。
中国のITC分野の半導体も電子製品も生産量の減退している。今年上半期にはすでに顕著になっていた。さらに消費も低迷が続いていること。9月の失業率は5.5%と高く、インフレ率は2.8%であるものの、食料インフレ率は8.8%と消費者に打撃を与えている。中国の失業率は2017年まで長らく4%未満だったが、米中貿易戦争から2018年から増加してきている。
3、 新コロナ政策で世界は、今年のオミクロン株によりウィズコロナ策に中国を除き転じ、新コロナ特需(パソコン・タブレット・ゲーム機器)が一巡し、その反動が出ている。
4、 新コロナ下も含め世界的な経済低迷により、新コロナからの利便度消費はあったものの、長続きせず、半導体をより多く使用するプレミアムスマホの買い替え需要も低迷している(買い替え期間の長期化)。
すでにスマホは年間出荷台数15億台をピークに頭打ちになっており、経済低迷下で市場争奪戦となっている。
当第3四半期のスマホメーカーの世界販売台数は2014年来最大の▲9%減となっている。アップルも一旦増産計画を発表したが撤回している。
5、 システム半導体やパワー半導体をより多く使用する車両、特に自動運転車両およびEVは、資源高でEVバッテリー価格は高騰、半導体の製造コストも大幅上昇、関係して車両価格の上昇、金利高でローン金利も上昇し、総じて販売台数の増加は今後見込めない(年間世界販売台数も1億台で頭打ちになって久しい)。
以上がこうした半導体業界における経済環境があるが、SOX半導体指数も昨年末をピークに現在までに7月までに40%落ち、その後も40%減が続いている。
半導体を使用する製品メーカー、半導体商社、半導体メーカー、どこをとっても在庫が多く積みあがり、半導体の値崩れを起こしている。特に韓国勢が7割以上を制する汎用性のあるメモリ半導体の価格は大きく下落している。
システム半導体にしても使用する電子製品が景気悪化で売れなくなり、企業の設備投資も鈍化していることから、生産量を減らすしかなくなっている。
↓ウォン決算であり、ドル換算では大幅な減収減益となっている。
スクロール→
第3四半期(2022年7~9月期) |
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/億ウォン |
売上高 |
前年比 |
営利 |
前年比 |
純利益 |
前年比 |
サムスン電子 |
767,800 |
3.8% |
108,520 |
-31.4% |
93,892 |
-23.6% |
うち半導体 |
230,200 |
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51,200 |
-48.7% |
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うちスマホ等 |
472,600 |
|
35,300 |
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うちディスプレ |
93,900 |
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19,800 |
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SKハイニックス |
109,829 |
-6.9% |
16,556 |
-60.3% |
11,027 |
-66.7% |
韓国の半導体生産量 前月比 |
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7月⇒ |
-3.5% |
8月⇒ |
-12.8% |
9月⇒ |
-4.5% |
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・サムスン電子のスマホ等はスマホ+家電+DXの部門/営利=営業利益 |
米国は自ら起こしたインフレの退治は大事だが、金利高による経済悪化も必至、世界では基軸通貨の米国を除き為替安のWインフレで米国より傷は重い。ここまで金利を上げても現場の高賃金は高止まり、労働者人口も増加し、高い商品でも購入する購買力が付いており、11月2日も4回続けて0.75BPも引き上げ、4.0%まで基準金利を上昇させている。
現在、世界経済を牽引するのは目新しいものはなく、EVと中国経済の回復だろうか。EVも原材料価格の高騰による販売価格高およびカーローン金利高により多くを望めない。
中国経済も北朝鮮並みの独裁が進んでおり、感染力が過去のコロナウイルスより大幅に強く、高齢者を除き重症化率も低いオミクロン株、規制強化策ではなく、ロックダウン策を採る限り、経済回復は望みようもなく、世界のサプライチェーン国でもあり、世界の製造・物流・流通に大きな混乱を引き起こさせる原因となっている。
ロックダウンを解除すべく、ファイザーやモデルナ同様のnRNA型ワクチンの開発を進めているが、基礎研究に乏しくなかなか成果は出ていない。nRNA型を接種したところで大量に感染すれば大量の死亡者を発生させるのだが・・・。
韓国は、中国との貿易が大きく、中国では今年に入っても各地でロックダウンが散発し続けており、輸出にも大きな影響を受けている。また、中国経済の低迷も韓国からの輸出減の原因にもなっている。
半導体の低迷は、インフレ退治の効果が出て、はじめて金利は下がり経済が回復することから、それは2024年以降とされている。2023年は我慢の年になりそうだ。