アイコン 尋常ではない韓国の短期資金市場 大手の社債も買手なし 金利上昇


韓国企業が1年以内に返済しなければならない短期借入金(借入金+短期債権)の規模が、史上最大の532兆ウォン(約53兆円)に過去最大となった。昨年末より54兆3447億ウォン、率にして11.3%増加している。
内訳は、銀行借入など短期借入が490兆3709億ウォン、社債·企業手形(CP)など短期債権が42兆1484億ウォンに達している。

一方、機関投資家たちは、市場金利の急騰で社債市場が冷え込み、また江原道が債務保証した江原レゴランドの資産流動化企業手形(ABCP)が不渡りになるという問題に直面し、信用度が高い大企業の社債まで投資を敬遠するムードが広がり、すでに長短の資金調達に支障をきたしてきている。

今月に入って、大手のハンファソリューション、LGユープラス、韓進などが相次いで社債発行に乗り出したが、投資家を見つけられず、未売却となっている。

保守的な資金運用でよく知られているロッテグループのロッテ建設まで社債(借換用社債)の購入先がなく、短期借入金の返済が困難となり、グループ系列会社から7000億ウォン(約700億円)の資金を緊急調達した。

こうしたことを受け、韓国政府は23日、50兆ウォン(約5兆円)以上の流動性を緊急供給することにしたが、資金市場を巡る不安要因は依然として残っているという評価が出ている。

 

スポンサーリンク

韓国銀行(中央銀行)が米国の金利上昇に基準金利を引き上げてきた結果でもあるが、米国は11月2日にもさらに金利を引き上げる予定であり、市場流動性がますます厳しくなる可能性が高いとされている。

機関投資家が相次いで今年の債権帳簿を締め切って投資をやめる「ブッククロージング」に乗り出す点も調達市場に否定的な影響を与えている。

短期資金市場は依然として不安な様子を見せている。
CP金利(A1等級、91日物)は、前取引日より0.12%ポイント上がった年4.37%で取引を終えた。リーマン・ショックの影響を受けた2009年1月20日の4.43%以来の高値となっている。

ロッテ建設は最近、グループ持株会社のロッテ持株会社に資金運用状況を毎日報告している。短期借入金の返済に困難をきたすなど資金源がこじれたことによるもの。ロッテグループ系列会社だけではない。
SKグループ系列会社であるSKエコプラント、暁星グループ系列会社である暁星化学·暁星重工業なども公募社債発行が難しくなり、8~9月に信用保証基金の保証を受けてやっと資金を調達した。
政府が一歩遅れて資金市場に流動性を供給することに決めたが、不安感は消えていない。
企業の短期借入金(満期1年未満)が530兆ウォンを上回っている上、景気悪化で営業活動を通じたキャッシュフローも悪化していることによるもの。

24日、韓国の投資銀行(IB)業界によると、SK、ロッテ、暁星、武林グループ系列会社は8~10月、信用保証基金のプライマリー債権担保証券(P-CBO)を通じて資金を調達した。(金利とは別に保証料を支払うことになる)
P-CBOは、信用保証基金などが資金調達に困難を来たしている企業の社債と貸出債権に保証を提供して発行する証券。
中小企業や資金事情が劣悪な企業が好んで使う資金調達方式で、保証がなくても資金調達に困難がなかった大企業がP-CBO発行に乗り出したのは、それだけ資金市場が厳しいことを意味する。
P-CBO発行(保証基金の保証付債権発行)
8月26日には、
暁星化学(900億ウォン)
コリアセブン(800億ウォン)、
大宇建設(700億ウォン)、
麗川NCC(500億ウォン)、
プルムウォン食品(300億ウォン)、
ヒュービス(700億ウォン)、
ロッテ建設(1000億ウォン)
など資金調達。
9月30日には、
暁星重工業(700億ウォン)、
SKエコプラント(600億ウォン)、
ダウデータ(500億ウォン)、
大宇建設(200億ウォン)、
コリアセブン(100億ウォン)
など資金調達。

10月27日には
ムリムペーパー(500億ウォン)、
コスマックス(200億ウォン)、
ハンシン建栄(150億ウォン)
など資金調達した。

LGグループの農業化学系列会社であるファームハンノン、コーロンインダストリーもP-CBOを通じた資金調達を検討している。
ロッテ建設は10月20日、短期借入金償還などのために系列会社ロッテケミカルから5000億ウォンを緊急調達したのに続き、11月18日には2000億ウォン規模の有償増資を行う。
レゴランド発の余波が、ロッテをはじめ大企業に「金脈硬化」を起こしている。
ある証券会社の企業金融部門役員は「先週の資金市場は非常に緊迫した状態に戻った」として「ロッテのように財務構造が優秀な企業まで資金源が絡まったとすれば他の会社はどんなに大変だっただろうか」と心配している。

私募社債市場では、すでに年7%を超えるA等級社債を簡単に確認することができる。
イーランドグループのレジャー事業を総括するイーランドパークは10月15日、40億ウォン規模の1年満期私募債を年7.2%で発行した。同社は9月、1年満期の私募債を年6.0%で発行したが、調達環境が悪化し、金利をさらに高めた。
家電企業ウィニアも9月23日、1年満期の私募債102億ウォン分を年7.0%で調達している。非優良社債は、発行額自体が大幅に減った。

市場金利が高止まりを続け、借入金の借り換え(再調達)環境も悪化している。
3年満期「BBB-」等級社債平均金利は年11%台で二桁に達している。
社債市場が冷え込み、企業の代替資金調達通路として浮上した銀行貸出金利は日々急騰している。
韓国銀行によると、預金銀行の8月の企業向け融資の平均金利(新規取扱額基準)は年4.46%で、前月より0.34%ポイント上昇している。今月は年5%台を超えたものと推定されている。
資金調達市場の困難が長期化すれば、社債発行にともなう企業の利子負担が重くなるしかなく、企業利益や企業活動に大きく影響してくる恐れがある。

泣き面に蜂で、企業の稼ぎも芳しくない。第3四半期実績発表シーズンに入った中で「アーニングショック(予想減)」を発表する企業が増えている。
サムスン電子の第3四半期の営業利益は108兆ウォンで、市場コンセンサス(証券会社推定値平均)より▲9%少なかった。
浦項製鉄所が台風被害にあったポスコホールディングスも第3四半期に9000億ウォンの営業利益を出したものの、コンセンサスの1兆4763億ウォン比を▲39.0%下回った。
コクドケミカルは、コンセンサス480億ウォンに比し、▲72.8%の130億ウォンの営業利益を発表した。

統営エコパワーは26日に行われる1200億ウォン(約120億円)規模の3年満期社債需要予測で希望金利の範囲を年5.7~6.1%と提示した。

統営エコパワーは、慶尚南道統営市光度面一帯に液化天然ガス(LNG)複合火力発電所を建てるために設立された特殊目的会社(SPC)で、筆頭株主のHDC(現代産業開発/建設業等)が保証する信用等級A+会社。同社は20日、社債市場で最高年5.2%の金利で780億ウォン(約78億円)分を発行しようとしたが、需要予測に10億ウォン(約1億円)の買収注文だけしか入らず、今回の需要予測希望金利を大幅に引き上げ、社債発行を推進している。

韓銀によると、5月末現在、企業(金融機関除く)が保有している通貨量(M2/流動性現金資産)は、1075兆564億ウォン(約107兆5千億円)で、昨年末より10兆9104億ウォン減少している。
ポスコグループは、現金主義を採るようにグループ傘下企業に伝達しているが、現金を含めた流動性は9月末時点で17兆9390億ウォン(約1兆8千億円)、3月末から▲1兆6450億ウォン(約1645億円)減少している。
以上、韓国紙参照

中国で2015年6月生じた株価大暴落(中国ショック/証券バブル崩壊/上海総合指数が一時5100ポイントから2900ポイント台)、その引き金になったのが市中の流動性資金の枯渇、当局が緊急注入し沈静化を図ったものの、外資不足も重なり、中国株価はそれ以来、4000ポイントを上回らなくなっている。
今回のこうした韓国の金融債券市場の異常は、江原道が保証した江原レゴランド(5月オープン)の建設資金調達のための発行証券の不渡りによる信用不安のほか、米金利高に伴う外資の金融市場からの資金引き上げによるものと推量される。また、一方で企業は景気悪化で資金需要は増しており、資金ニーズの高まりに金融市場が応えられなくなっている。
社債発行の金利が上昇すれば、借り入れコストが企業収益を圧迫し、兼ねてから営業利益かで支払い金利がまかなえないゾンビ企業も多く、悪循環に陥る可能性も高い。
そうした異常により株価はいつ暴落してもおかしくない状況であるが、世界同時の高インフレと高金利・為替安により、多くの国で何らかの金融問題が生じており、世界の債券市場は何事もなかったかのように動いている。大きなショックになる引き金になる可能性のある国はどこの国にもあり、日本もその一つとされている。


 

[ 2022年10月31日 ]

スポンサーリンク
 

 

 


HTML Comment Box is loading comments...



※記事の削除等は問合せにて。

スポンサーリンク
 

 

関連記事

 

 



PICK UP


破産・小口倒産一覧