ポスコのリチウム戦略 韓国とアルゼンチンで工場稼動
ポスコホールディングスは10月末、韓国内企業では初めて海外で二次電池素材の水酸化リチウムを生産できる工場をアルゼンチンら竣工(投資額8.3億ドル)させた。
アルゼンチンの新工場の年産能力はEV(電気自動車)60万台に供給できる2.5万㌧(1台あたり42㎏)に達する。
現在建設中の第2工場に加え第3工場も建設し、最終生産能力を合計10万㌧に引き上げる計画(240万台分に相当)。
ポスコは鉄鋼に次ぐ柱としてリチウムに照準を合わせている。
アルゼンチンでは、
2018年8月、「オンブレムエルト塩湖」の採掘権を持つオーストラリアのギャラクシー・リソーシーズ社から、採掘権を2.8億ドルで買収していた。推定埋蔵量は1350万トン(3.1億台分/ポスコ調査)。採掘を開始し、今回の生産工場の操業となった。採掘は塩湖一帯の地下数百メートルで進められている。
豪州では、
ポスコは2018年2月、豪ビルハラ社から豪リチウム鉱山の持分を買収した。
ポスコグループは2023年11月、年産100万台規模の全羅南道栗村産業団地にポスコピルバラリチウムソリューション(豪鉱山会社ピルバラ・ミネラルズとの合弁会社〕の水酸化リチウム工場を竣工、2024年4月、韓国で初のEV用水酸化リチウムを出荷していた。
こちらは豪州産リチウム鉱石から産出し、建設中の第2工場(2024年内完成)を含めて年4.3万トン(年100万台分/43kg)体制。
同社は、サプライチェーン(供給網)の安定化のために原料分野への投資を続けている。アルゼンチン・豪州・チリへ展開している。
スクロール→
韓国ポスコのリチウム事業とリチウム価格 |
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単位:Lithium Carbonate (CNY/T)/先物取引市場 |
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リチウム価格 |
備考 |
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2018年2月 |
154,500 |
ポスコ、豪ビルバラから豪鉱山持分買収 |
2018年8月 |
84,000 |
ポスコ、豪ギャラクシーSからアルゼンチンの採掘権買収 |
2019年12月 |
49,500 |
新コロナ前 |
2021年10月 |
192,500 |
ポスコ、豪ビルバラと合弁工場建設合意 |
2022年3月 |
496,500 |
露制裁 |
2022年10月 |
597,500 |
ピーク価格 |
2023年1月 |
460,500 |
米EV補助金開始 |
2023年8月 |
201,500 |
埋蔵量4千万トンの米マクダーミット盆地発見 |
2023年10月 |
163,500 |
世界でEV販売失速 |
2024年4月 |
110,500 |
ポスコ、韓国の合弁工場で初出荷 |
2024年10月 |
72,500 |
ポスコ、アルゼンチン工場生産開始 |
11/4日 |
72,500 |
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リチウムのリスクとしては、米国では新たに露天掘り可能な世界の産地を圧倒する最大の鉱脈が見つかっており、開発が進むことから、価格は安定化する。
但し、レアメタル・リチウムの最大の生産国であるのは中国、実際は豪州や米国で生産されているほとんどのリチウム鉱石を中国企業が購入し、中国に持込み、安価な石炭(世界最大の生産国+輸入もしいる)の電力で抽出、EV用二次電池用に水酸化リチウムとして製品化している。
中国がレアメタルの輸出規制を講じれば価格は暴騰する。
リチウムに変わる二次電池システムが開発されればリチウムの商品価値は大きく毀損する。
リチウム含有鉱石
リシア輝石(LiAlSi2O6)、
葉長石(LiAlSi4O10)
リシア雲母(KLi1.5Al1.5AlSi3O10F2、花崗岩のペグマタイト系)
海水系
海水に含まれており、塩湖や塩湖の地下層で大量に見つかっている。
塩湖系は精製すれば水酸化リチウムであり、そのまま製品化できる。
チリ・アルゼンチン・ボリビアが塩湖系リチウムのトライアングル。
日本でも岐阜県南部に分布する花崗岩のペグマタイト系リシア雲母から抽出することができるが産業にならない含有量。