アイコン サムスン電子の「2030 大統領AIイニシアチブ」の風 日本は・・・


韓国のサムスン電子は2030年までにシステム半導体で世界一になると表明している。半導体メーカーが将来構想を発表するのは稀であるが、これは文政権の政策でもあり、AI専門家の崔起栄長官が率いる科学技術情報通信部が「大統領AIイニシアチブ」を発表、2030年までに世界のAIチップ市場の20%を獲得して主要プレーヤーになるという計画と機を一にしている。
  
サムスン電子の李在鎔副会長は、朴大統領が弾劾に至った崔順実ゲート事件に連座し、その身柄は司法も牛耳る文在寅大統領のまな板に乗せられている関係にある。

2030年の予想はできないが、目先、サムスン電子は半導体製造の域を広げ続けているのも事実、サムスン電子は2016年からのメモリ半導体ブームに乗り巨額の利益を得ながら、戦略的に生産力の大拡充を図ってきた。

トランプ米政権のファーウェイたたきは、ファーウェイにメモリ半導体を年間6000億円以上納品しているサムスンにとって打撃ではあるが、将来的にはその数十倍恩恵を受けることになる。
すでにスマホは、ファーウェイが占有率トップになっていた欧州市場では、トランプ制裁により、ファーウェイ製はまったく売れなくなり、サムスンがトップを挽回するとともに市場占有率も大きく拡大させた。(前四半期の巨額利益は半導体の回復とモバイル部門の急回復によるもの)

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また、5G市場もファーウェイたたきにより、4Gまで世界の市場占有率が5%前後だったサムスンが、5Gではすでに30%を越えてきている。5Gは今後世界で普及し続けることから、1度サムスン製を設置した場合、ほかの機器を有効活用するため、6Gになろうとサムスン製が設置され、大きな利益を未来永劫獲得し続けることになる。
トランプ米政権はサムスン電子のために存在しているようなもの。

これまでの半導体市場は、米中貿易戦争により、世界経済が停滞、半導体の在庫が増加し、価格暴落、そこで新たな生産設備を、価格変動が少ないシステム半導体のファンドリー部門を強化し、矢継ぎ早に米中企業の半導体ファブレスメーカーから受注し、事業を拡大させてきた。

2030年までには、メモリ半導体は現在より2世代から3世代先にあると見られるが、ファプレスメーカーも設計図面をファンドリーメーカーに提出し、ファンドリーメーカーに技術を盗まれることも確か。巨額利益と戦略的投資を続けるサムスン電子がシステム半導体のオリジナルでも世界ナンバー1になれば、ファブレスメーカーの領域を侵食するのは当然のことだろう。
ファンドリーメーカー世界一で過半のシェアを有する台湾のTSMCは、以前からシステム半導体メーカーにはならないと宣言してファブレスメーカーからの受注を拡大させてきた経緯もある。

米半導体メーカーのマイクロンは2018年、台湾の聯華電子(UMC)へDRAM生産を委託していたが、その台湾企業のUMCは、中国製造2025の国策に基づき設立された新興半導体企業の福建省晋華集成電路(JHICC)に対し、マイクロンから得た生産技術資料を提供し、JHICCが生産しようとしているとして米国で訴訟を起こされた。
中国企業は巨額を投じ工場建設、半導体製造装置もライン化してほぼ完成、試験操業をはじめる段階に入っていたが、マイクロンからの訴訟に加え、米政府が台湾企業も中国企業も制裁を科した。このため台湾UMCは米国企業からの受注がなくなるとともに、中国JHICCも納品された米アプライド製半導体装置の生産のための調整とメンテの担当者が全員米国へ引き上げ、できなくなり、そのまま工場は閉鎖した経緯がある。
UMCは倒産を免れたが信用をなくした。最近、やっと暴落した株価が少し動き出しており、米制裁に動きがあった可能性もある。

サムスン電子が自社でオリジナル製品を生産するにしても、そうした訴訟が懸念される。(サムスンは訴訟に耐えるよう自ら豊富な特許を取得し、相手に知らぬふりして使用させ、相手特許との相殺により、生産を継続する可能性が高い。アップル×サムスンのスマホ戦争でもそうした訴訟展開も一部あった)
サムスン電子は中国BaiduとAIチップ生産のパートナー契約を締結している。中国は2017年までに全国主要都市にAI専門学校を100校創設し、AI技術者を育成するとともに、公共機関が率先してAIを導入することで、AI企業の成長を支えてきている。
すでに何3億台ともされる中国の監視カメラにもAIが導入され、顔像認識ソフトとビッグデータでのチェックを可能にしており、犯罪者の摘発にも大きく貢献している(ウイグル族強制収容所の監視やウイグル族など漢民族以外の監視、政府政策に異論を発する者の監視にも利用され、多くのメーカーが米国の制裁を受けている。米制裁の中国企業の監視カメラを日本の総務省・文科省・農水省は今年になり導入設置している。おめでたい。/スマホや監視カメラ等情報機器は、アップデートや故障原因把握のため、スマホやタブレット端末、パソコンは、メーカーと通信ラインでつながっているが、中国製の場合、利用データの詳細まで中国で情報収集し、そのデータを中国政府が利用していると米政府は指摘し、ファーウェイや監視カメラメーカー、軍の装備品と関係するIT企業などを制裁している。米国による、急成長する中国IT産業潰し、中国の世界覇権戦略潰しを目標にしているとの見方もある)。

韓国のAI大国になる優位性はあるのか
1、韓国が半導体製造大国である。
ただ、韓国勢が世界に優位にあるのは、中身は汎用性のDARM+NANDのメモリ半導体が主力、現在、受注生産のファンドリー事業を強化している段階にある。ただ、製造技術は台湾TSMLとともに世界最先端にあり、豊富な利益を背景に製造技術の革新を続け、強みを有している。
(生産技術力とAIはまったく別分野、製造とソフトの違い、民族的な発想力も必要となる。既存分野での発展系では、国内に膨大な市場を抱え、鎬を削る中国のAI企業でも、資本もAI人材も生き残った企業に集約されてくることから、そうした企業には到底戦えない)

2、韓国内におけるAI基盤の製造とサービスの需要を内包している。
韓国はAI半導体の4大応用分野である①消費者デバイス、②サーバー、③自動車、④モノのインターネットに属するスマホ、自動車、家電、通信、ポータル関連で世界展開する企業を抱えていること。
(既存の消費財からAIを活用する技術は誰でも想定できるもの、新たな分野の市場創造をしなければ将来的なグローバル市場での優位性は創出できない)

3、リーダーシップ、
「大統領AIイニシアチブ」の下、AI半導体専門家の崔起栄氏が科学技術情報通信部長官としてリーダーシップを取り、開発への政府助成金の支出、政府研究機関と国内関連企業の研究開発融合、企業の戦略的研究開発投資を引き出す。
(ただ、韓国では政権が変わるたびにこうした先端事業のプロジェクトが発足するが、政権交代で事業もリーダーも積弊清算させられ、長続きしたためしがない。)

ただ、米国のシステム半導体のファブレスメーカーは、UMCの一件もあり、韓国企業へ発注する傾向にあり、サムスン電子は急速にファンドリー事業部門を拡大させている。
米政権が変わったとしても、トランプが敷いた中国政策は、愚かなオバマ時代に戻ることはなく、中国企業とも事業を拡大させているサムスン電子にとって、そのリスクは残る。
以上、

日本のように政権が主導して諮問会議に絵だけ描かせた「第4次産業革命」、銭も魂も入れず、やった振りばかりしていては世界から遠ざかるばかり。日本政府の第4次産業革命は神棚の餅になり、もうすでにカビが生えている。
日本の政策は常に、長期計画に基づき数値目標を入れ、毎年進捗状況を検証しないことにある。銭を投入しても口実用に用いるだけの紐付き投資、まったく話にならない。
電通ではなく、紐の付かない専門家の第3者機関に事業と銭を委ねることをしない政府が、その体質を変えない限り、日本は第4次産業革命に乗れず没落していくことになる。
数年前のデジタル担当大臣は、パソコンを触ったこともない議員を派閥優先で就任させるなど、国民をバカにしていた。
菅首相で少しは変わることを期待したい。

海外のIT大手企業はオーナー企業が多く、利益を戦略的投資にまわすが、日本企業はサラリーマン経営者が多く、アベノミクスで空前の利益を上げたにもかかわらず、経営者自らの身分を保全するため、その利益を蓄積することに専念、株主に還元し利益を放出するなど愚かな戦略をとり続け、政府がいくら利益を投資にまわせと声をかけても、その利益に満足して、更新投資と綺麗な広い事務所への移転投資にとどまり、結果、世界の企業のデジタル化に大幅に後れを取っている。
菅首相が目くじらを立てている官庁の硬直化した行政システム、新コロナの統計が日々取れず後進国になっている現状を見せ付けた。
最近の後進国はいきなりデジタル化から進めており、前近代的なFAXで集計する日本はすでに新興後進国からも遅れている。
菅官房長官と小池都知事のバドルも都のそうした報告遅れから生じた。官僚意識は各組織の末端まで浸透しており、8月段階で、東京都の新コロナ死の発表値が、現実のコロナ死から1週間遅れになっていると報道されていた。中には1ヶ月遅れの発表値もあったという。
東京都にはヤフー(元)社長が副都知事として2019年9月就任している。しかし、新コロナ事態にHPを作ることは得意のようだが、新コロナに対してデジタルで能動的に対応する力はなく、自己満足していることにも問題がある。
台湾の新コロナに対し能動的に対応しているオードリー・タン氏
科学技術をワクチン開発にも応用する韓国の崔起栄氏
そして、日本では・・・まだFAXの世界
(官庁や企業からFAXを一掃すれば、デジタル化は急速に進む)

 

[ 2020年10月17日 ]

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