アイコン 韓国半導体神話 崩壊の危機


半導体は、汎用性がある情報保存用のメモリ半導体と特化情報処理用の非メモリ半導体=システム半導体に分かれる。
サムスン電子が世界1位であるメモリ半導体は景気の流れに敏感で、需給バランスに伴い価格は大きく上下する。見込み生産のメモリ半導体。
一方、システム半導体は使用目的によって半導体は異なり、それぞれの開発企業=ファブレス企業が個々に需要見込みを立て、製造専業のファンドリー企業に生産を委託している。生産ロットごとに価格も設定されており、景気悪化により発注量がそれまでより減ることはあるが、価格は安定している。また、景気にほとんど左右されないシステム半導体は引き続き安定した価格と生産量が発注される。

ファブレスメーカーはそれぞれ細かく需要予測を立てることから、メモリ半導体のように大雑把な大量生産には至らず、在庫増、値崩れのような大きな好不況を繰り返さない。

 

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非メモリ半導体=システム半導体は大きく4分野に分かれる。
1、サムスン電子やインテルのように設計から生産まで行う総合半導体企業。
2、クアルコムやAMDのように生産施設をもたず設計だけするファブレス企業、
3、ファブレス企業が設計した半導体を受託して生産するファウンドリー企業。
その他、ARMのようなシステム半導体の一部に組み込むソフトに特化した企業もある。

メモリ(演算)半導体を主とする半導体総合企業は、景気低迷により総じて需要は減り、生産現場を直撃、特にメモリ半導体のDRAM価格の下落が顕著になっている。
ファンドリーメーカーはオーダーメード型半導体を生産し市況にあまり影響を受けず安定している。TSMCとサムスンの大きな違いはそこにある。


TSMCが世界一にサムスン電子が「半導体世界1位」という王座を奪還してからわずか1年でこの座を台湾企業に明け渡す見通し。
台湾のTSMCは7~9月期に売上高が前年同期比48%増の6,131億4,300万台湾ドル(約2兆8000億円)を記録。
韓国のサムスン電子の同期の半導体の売上高は24兆ウォン(約2兆4000億円)~25兆ウォン、インテルは154億9000万ドル(約2兆2545億円)と推定されている。

このようになればTSMCは過去初めてサムスン電子とインテルを抜いて半導体分野で1位に上がることになる。
TSMCはすでに時価総額基準で世界の半導体業界で1位に上がっている。
TSMCの時価総額は7日基準で515兆ウォンで、サムスン電子の336兆ウォン、インテルの150兆ウォンを大きく上回っている。

また、車載用半導体は依然として供給不足の上に、アップル、グーグル、テスラなど半導体を作っていなかった企業まで半導体設計に飛び込んでいる。

半導体受託生産の3年後、今年比較47%の成長率
世界のファウンドリー市場は2022年の986億ドル予想から2025年には1456億ドル、率にして47%成長する見通しでもある。

TSMCは初のファウンドリー企業。米テキサス・インスツルメンツ(TI)などで勤めたモリス・チャン氏が1987年に台湾政府なども出資した資本金で設立。TSMCは米国などの顧客が設計した半導体を委託を受けて生産するファウンドリー事業に特化した半導体企業。俗に言う下請会社にすぎないが、35年間受託生産一筋にファブレス企業から信頼を勝ち取ってきた。
「顧客と競争しない」、受託生産以外メーカーになることに目を向けなかった。時間が過ぎるほど技術力は蓄積され顧客との信頼は厚くなった。最先端のEUV生産も可能にしている。
顧客とともに成長したため、いつのまにか屈指の企業になっている。
ここに技術流出を避けたいファブレス企業が競合企業になりかねない総合半導体企業よりファウンドリー専業企業を好む傾向がある点も有利に作用している。

ファウンドリー市場のシェアでTSMCが53%、サムスン電子が16%前後で、両社の格差がますます広がる主な理由。
2018年に半導体価格は暴落した、在庫を抱えたサムスン電子は、完成したばかりの新工場で在庫を抱えるメモリ半導体を生産するわけにはいかず、さりとて遊ばせるにもいかず、ファンドリー事業を積極化させ、安価に取り捲り、一時は18%以上のシェアを勝ち取り日の出の勢いとなった。 
しかし、TSMCの優位は変わらず、サムスンは2030年にシステム半導体でも世界一になると宣言しており、ファブレスメーカーも直近、これまでサムスンに委託していたシステム半導体を、最新型はTSMCを乗り換えている。
それには2つの理由がある。一つは上述のようにサムスンと将来競合する可能性、もう一点は、生産設計にTSMCに1日の長があること、サムスンの製造で発熱問題など生じ、ファブレスメーカーは開発品が限られ、問題が生じればライバル会社もあり、致命傷になる可能性があり、より試験設備を持つTSMCへ回帰している。(サムスンはアマゾンのデータセンター用24ナノ以上のシステム半導体で不良品を発生させ、4000億円前後を損害賠償金としてアマゾンに支払っている)

UMCの復活
台湾のUMCはファンドリー事業で以前は第2位であったが、中国の半導体新興企業に受託生産していた米マイクロンのDRAM生産技術を流出させたとして、当該の中国企業とともに米裁判所および米政府が制裁を受けたが、半導体不足にニーズは高く24ナノ以上のシステム半導体領域で息を吹き返している。同社はシンガポールにも拠点を持っているが最先端の14ナノ以下の生産技術を持たないものの、半導体不足にそれなりに収益も上げている。
ただ、技術流出懸念がないこと、最新製造技術を持っていることなどからTSMCにファブレスメーカーがより集中する要因ともなっている。

韓国の半導体生産は今後、紆余曲折段階に入る。
すでにサムスン電子はファンドリー部門が同社の半導体売上高の一定量に担うようになっているが、米政府の求めに応じ、ファンドリー工場を米国に建設する。TSMCも同様だが、韓国から中国や世界に向け輸出されている半導体によって成立している韓国の貿易構造がおかしくなる。

韓国の2社とも米進出を決定し、サムスンはシステム半導体の受託生産拠点を別途新たに開設する。SKハイニックスは後工程のパッケージ化や最終検査工程の工場を150億ドル投じて米国に設けるとしている。ただし、すでにSKは韓国内の半導体新工場の建設予定を現在の半導体在庫増で先送りすると発表している。米新工場計画も先送りされる可能性が高い。

世界のメモリ半導体の在庫増に対して、サムスンは生産量を今後とも落とさないとしている。一方、SKもマイクロンもすでに在庫増から生産調整に入り、さらに新工場投資も計画も先送りしている。 
サムスンは過去の成功体験に基づくものとされるが、世界経済は新冷戦、インフレ退治の高金利政策に経済は長期に低迷すること必至、サムスンの決断は吉と出るか凶と出るか分からない。
2010年~14年はスマホが業績を牽引、スマホ需要の一巡(15億台頭打ち)から2015年から半導体が牽引している(バトンタッチがうまくいった)。

中国では両社とも新工場を建設し生産拡大に入っているものの、14ナノ以下の生産はEUVなくしては難しいとされているものの、EUVは中国への輸出が禁じられており、韓国勢の2社の中国工場も対象となっている。
米国から制裁されている中国SMIC(中国最大のファンドリー企業)はEUVを使用せず7ナノを実現したとされ、今後の成り行きしだいでは数年後、韓国企業は中国でも後手になる可能性もある。

EVバッテリーは、
バッテリーは材料コスト(8割前後)が異常に高く、付加価値が限定され、それも主力は自動車メーカーとの合弁事業となり、業績寄与は限定される。

すでにバッテリー事業では、韓国勢3社は各国の自動車メーカーと合弁事業で事業拡大を図ることから、生産拠点も韓国外となっている。
また米国では8月から米国産化率を高いEVに対してのみ、政府の購入補助金が支給され、韓国勢は韓国から100%米国へ輸出していることから韓国製EVは補助金対象外となっている(現在、韓国政府が米政府と政治的に交渉中)。

2017年当時の中国の国産メーカー育成のための新エネ車購入補助金策とまったく同じ策を米政府が導入している。そのため韓国勢の現代+起亜自動車は、米国で9月まで3ヶ月連続してEVの販売台数は落ち、半導体不足などから受注生産になっている現状からして年末から年初にかけ、さらに販売台数が落ち込むものと見られている。

オバマ政権時代の市場任せの新自由主義経済から、トランプ政権時代の貿易戦争、バイデン政権からは新冷戦の保護貿易+管理貿易時代に移行している現状からして、日本も半導体製造装置の輸出先など大きな制約を受ける可能性もある。ボケてヒステリックな80歳の米バイデン氏の政権の政策を注視していく必要がある。

ただ、韓国では、輸出の主産業となっている半導体、そうした米政府の要請に応えての工場進出は避けられないものの産業空洞化をもたらす危険性が、ますます高まることになる。
経済は貿易に依存し、内需拡大策はまだ外資依存度も高く実現していない。
日本は内需拡大策を政治が率先して忌避してきた7年間のアベノミクス政策により、世界経済が低迷すれば、前を向くことはほとんど不可能に近いが、もう慣れっ子に、物価高騰でも、経済が低迷しても何もへこたれない。ただ、40年後、4000万人の人口減、将来に向け国債残が重く圧し掛かるだけに、もっと発行せよという奈良の化猫女グループもおり、もはや気が知れない段階に入っている。

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[ 2022年10月11日 ]

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