韓国、中国製厚板に最大38%の反ダンピング税導入へ K鉄鋼悲鳴 アルミ動向
韓国政府は中国製の熱間圧延厚板に反ダンピング関税(最大38%/平均30%前後)を賦課することを検討している。
トランプ米大統領の関税戦争の速度が上がり、韓国政府も貿易障壁を高める動き。
(トランプのアルミ・鉄鋼関税は、3月12日から一律25%設定)
韓国の鉄鋼産業は、中国製の低価格商品の流入で困難に陥っており、来月米国の鉄鋼関税が現実化すれば被害がさらに大きくなりかねない。
韓国産業通商資源部貿易委員会は20日、中国製の熱間圧延厚板のダンピングで韓国国内の産業が被害を受けていると予備判定し、「暫定ダンピング防止関税率」27.91~38.02%を策定した。
貿易調査の手続きは、予備判定の後に本調査につながる。
韓国貿易委は、本調査が終わる前でも関税を課すことができるよう、暫定ダンピング防止関税を企画財政部長官に建議することにした。
中韓FTAで現在は無関税
現在は、中国製の熱間圧延厚板は原産地証明などをすれば、中韓自由貿易協定(FTA)が適用され無関税で輸入されている。
反ダンピング関税措置は、現代製鉄の提訴によって行われた。
現代製鉄は昨年7月、安価な中国製厚板で韓国企業の収益性が悪化しているとし、政府に調査を要請した。
ダンピングは正常価格以下で商品を輸出するもので、輸入国はダンピングをした分だけ関税を課すことができる。
鋼材の厚板は主に造船に使用される。
2021年の中国製厚板の輸入量は32万トン、2024年は前年=2023年の112万トンから6万トン増加し118万トン、約5%増加して過去最高だった。驚異的な輸入量の増加であり、韓国の鉄鋼業界を苦しめている。
韓国ポスコは、インドネシアに高炉、ベトナムに電炉を有しているが、両国でも中国製鉄鋼製品の流入が拡大している。なお、H型鋼や厚板の製造は電炉による生産、石炭を大量に燃やした電力を大量に消費する。
中国製厚板は韓国内価格より2割安価
韓国国内で中国製厚板価格は、韓国製に比べて約20%安い。造船業界も安値受注合戦で受注量は大量に抱えているものの利益は限られ、ウォンの為替安もあり、厚板を別にしても造船コストは上昇しており、造船業界は中国製厚板の使用量をこれまでの20%から30%に引き上げる動きとなっている。
世界の生産量の半分以上を生産する中国の鉄鋼産業。こうした鉄鋼の生産施設を抱えているものの、内需は不動産業を国家規制により市場が大幅に縮小しており、2024年9月、景気回復に規制など大幅緩和したところで、落ち込んだ市場はなかなか回復していない。中国の鉄鋼業界は、自国で消費できない鉄鋼を、韓国はもちろん全世界に低価格で押し出している。
こうした動きに欧米諸国は、中国が余剰生産施設で生産した物品をダンピングの破格値で輸出した場合、自国産業は崩壊するとして、欧米各国が中国製品に関税障壁を設けで門戸を狭めている。
韓国の場合、2014年末に中韓FTA締結、その後の2017年10月、建築鋼材のH型鋼が安価に輸入されるようになりAD措置採用して輸入規制、さらに鉄筋も輸入規制しようとしたが、中国政府から「報復するぞ」と脅され、韓国は鉄筋の輸入規制を撤回した経緯がある。
韓国は今になって中韓FTAのおける中国製品の大量流入に苦慮、韓国の中小の製造業者を圧迫、雇用問題も含め消費低迷の悪循環に陥っている。
韓国の内需不振は見えてこない。
韓国のマンション販売は低迷、金利高で家計負債による金利負担により消費圧迫、物価高だが失業率も青年失業率も低く、労働者増による購買力の上昇は生じている。しかし、物価高もあり、消費は低迷している。
1月の韓国の食料インフレ率は2.4%、日本の7.8%より大幅に落ち着いている。日本は石破政権がコメの先物取引所を開設させ、コメ価格を暴騰させ、食料インフレを高騰させている。
韓国は建築不振に加え政治的混乱もあり、建設向け鋼材が低迷している。
米国の鉄鋼製品の2024年の輸入額(通関ベース)は811億ドル、
うちカナダが132億ドル、16%
中国が124億ドル、15%
メキシコが104億ドル、13%
などとなっている。
米アルミ大手アルコアCEOがアルミ関税の反対表明 10万人雇用喪失と
アルコアのウィリアム・オプリンガー最高経営責任者(CEO)は25日、トランプ米大統領が表明しているアルミニウムへの関税措置により、米国で約10万人の雇用が失われる可能性があるとの見方を示した。
同時に、関税措置(アルミは現行、免除もしくは10%の関税、一律25%に引き上げ)だけでは国内での生産拡大を十分に促すことはできないとした。
トランプ大統領は今月10日、鉄鋼とアルミニウムに対する関税を大幅に引き上げ、一律25%とすると表明している。主要供給国のカナダ、メキシコ、ブラジルなどへの適用除外措置と無関税枠も撤回した。
オプリンガーCEOは、「今回の関税措置により米国のアルミニウム業界で約2万人の雇用が失われるほか、アルミニウムの関連支援部門ではさらに8万人の雇用が喪失する恐れがあると指摘。米国のアルミニウム産業にとっても米労働者にとっても悪いものだ」と述べた。
米国のデータによると、アルミニウム製錬所の昨年のアルミニウム生産量は僅か67万トン(工場稼働率は56%)と、2000年の370万トンから大幅に減少。
ケンタッキー州やミズーリ州などでの近年の製錬所閉鎖を背景に、米国はアルミニウムを輸入に大きく依存している。
工場稼働率を100%にしたところで米国の生産量は120万トン止まり、輸入量は年間600万トン前後、総消費量が700万トン前後だが、高賃金の米国で生産することになれば、アルミ製品は関税で高騰、高コストの国内生産で高騰する。
アルミは建材・機械類・自動車などに大量に用いられ、特に自動車は燃費向上、軽量化のため大量に使用されてきている。
アルミ生産には大量の電力が必要であり、トランプ政権が公約している原油や天然ガスの大増産・価格下落計画を早期に実行しなければ、高コストの労働力に加え、高い電力価格がアルミ生産コストを大幅に押し上げることになる。
欧州など海外では価格競争力を持たなくなる。ましてや露制裁緩和では安価な露産アルミが大量に欧州へ流れ込む可能性もある。